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市場に対する宣戦布告?決算短信から財務諸表を不要とする案が急浮上

 

 株式市場における情報開示に関して、驚くべき議論が進んでいる。投資家がもっとも重要視している四半期の決算短信から、財務の基本中の基本であるBS(貸借対照表)とPL(損益計算書)を不要にしようというものである。もし、これが実現すれば、日本市場の透明性は一段と低下する。

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 2016年4月18日、金融庁は、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループの報告を公表した。実はこの報告書には、企業の情報開示について事務負担が増加しているとして、場合によっては四半期の決算短信からBSとPLを不要とする案が盛り込まれていた。

 上場企業の情報開示は、主に金融商品取引法で義務付けられている有価証券報告書と決算短信の2種類がある。有価証券報告書は内容が豊富だが、開示までには時間がかかる。決算短信は速報性を重視したいという市場の要請に合わせて導入されたものである。

 有価証券報告書にはBSとPLの開示が義務付けられており、仮に決算短信からBSとPLがなくなっても、同方向書を見れば財務諸表はチェックできる。だが、同報告書が作成されるタイミングは遅い。
 例えば3月決算の場合、5月に初旬から各社の決算発表ラッシュとなるが、このタイミングにおいてBSとPLが開示されていない場合、6月に有価証券報告書が公表されるまで投資家は財務状況を知ることができなくなる。
 有価証券報告書の開示前に株主総会が開催されることになるので、総会の通知によって初めて財務諸表が公開されるという事態になりかねない。

 日本の証券市場は、米国など諸外国と比較して透明性が低いとの指摘があり、これが日本企業の資金調達能力にも影響を与えてきた。最近になってようやく欧米並みの情報開示が定着したが、もしこの施策が実施された場合は、かつての日本に逆戻りしてしまう。

 金融庁の審議会において、このような見解が出てくること自体が大変な驚きだが、こうした見解が堂々と報告書に盛り込まれているということは、企業側に情報を開示する必要はないとの雰囲気が蔓延していることの裏返しである。

 実際、報告書では、「決算短信の意義が速報性にある」という事実を考えると、その内容については「可能な限り自由度を高めることが必要」としている。つまり、本来は開示する必要がない情報なのだから、企業が自由に決めればよいというスタンスになっている。

 オリンパスや東芝の不正会計問題など、日本企業の透明性が厳しく問われているこのタイミングにおいて、あえてこのような見解を出してくるというのは、ある意味では市場に対する宣戦布告ともいえる。
 もしこうした施策が本当に通ってしまうようなら、また日本の投資家がこれを唯々諾々と受け入れてしまうようなら、日本という国が、完全に後進国としての扱いを受ける日もそう遠くはないかもしれない。

 - 経済 ,

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