ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

今更? ウーバー出資や2足歩行ロボット買収など、トヨタに漂う出遅れ感

 

 トヨタが人工知能やシェアリング・エコノミーへの対応を矢継ぎ早に進めている。だが、両分野の主要プレーヤーはすでに米国のIT企業主導で固まりつつあり、トヨタの出遅れ感は否めない。

toyotaroboto

 トヨタは2016年5月25日、配車アプリ大手の米ウーバーテクノロジーズと提携すると発表した。グループ会社などを通じてウーバーに出資し、ウーバーのドライバーにトヨタの車両をリースする。
 また同社は、米グーグルからロボット事業の中核子会社を買収する方向で交渉を進めている。買収するのは、ボストンダイナミックスとシャフトの2社。シャフトは東京大学発のベンチャー企業だったが、2013年に突然、グーグルに買収されたことで知られる。

 現在、自動車業界は過渡期を迎えている。IT企業主導で自動運転技術の開発が進むと同時に、ウーバーに代表されるようなシェアリング・エコノミー企業が急拡大する可能性が高まっている。
 これらのイノベーションが同時に進むことになると、1人1台クルマを保有する必要がなくなり、自動車産業の市場規模が大きく減少する可能性がある。こうした状況から、トヨタなど既存の自動車メーカーの対応が注目されていた。

 トヨタをはじめとする日本勢は、独自で自動運転車の開発を進めると同時に、世界で主流となりつつある電気自動車ではなく、燃料電池を使った次世代車両の開発にシフトするという方向性を明確にしつつあった。

 だが、今回の一連の対応は、トヨタが今後の方向性について、明確な構図を描けていないことを逆に知らしめる結果となってしまったかもしれない。

 ウーバーはすでに配車サービスとしては世界標準となっており、いまさらトヨタが出資したところで、トヨタがコントロールできる状況にはない。むしろ、リース料を買い叩かれ、ウーバーの下請け的な立場に甘んじてしまう可能性もある。

 グーグルからのロボット買収も何を目的にしているのか不鮮明である。ボストンダイナミックスは、2足歩行ロボットでは最先端を行く企業である。だが、米国防総省の支援を受けて開発を進めてきた経緯があり、ロボット兵士を製造する事を目的とした軍需企業であることは誰もが知る事実だ。

 グーグルがロボット事業の子会社を売却するのは、ロボット事業の責任者が退社したことが直接的原因といわれる。だが、その背後には、一連の開発を通じて、2足歩行ロボットには、軍事利用しか目立った需要がないことがはっきりしてきたという現実がある。

 当たり前のことだが、ロボットが人の格好をしている必然性は少ない。軍隊で2足歩行ロボットが重宝されるのは、車両や武器など、人が操作することを前提に作られた膨大な装備品をすべて取り替えることが非現実的だからである。
 だが民間用途の場合、基本的に新製品に人工知能が搭載される。介護やエンターテイメントなど、どうしても人の格好をしている必要のある製品にニーズは限られる。

 グーグルは自動運転サービスの準備を着々と進めており、米国で自動運転車が実用化されるのは時間の問題である。グーグルがサービスを開始する時には、電気自動車がベースとなり、ウーバーの配車サービスと連携されるのはほぼ確実である。トヨタはその後陣を拝する形にならざるを得ないだろう。
 今さらウーバーと提携したり、グーグルの2足歩行ロボットの技術を買収したところで、大きな効果は得られない可能性が高い。

 市場では、自動車メーカーの頂点に立つトヨタが、既存のIT企業とは異なる独自のアプローチを示してくれると期待する向きもあった。だが、一連の対応を見る限り、他の凡庸な日本企業と同様、方向性が定まらず、意思決定が遅いだけとの印象を市場に与えてしまった可能性がある。
 長期的な視点で考えた場合、トヨタの経営は大きな曲がり角に差し掛かっているのかもしれない。

 - 経済 , , , ,

  関連記事

suzuki
軽のスズキがババを引いた税制改正大綱。自動車業界もゼロサムゲームに突入

 自民・公明両党が発表した2014年度の税制改正大綱では、自動車税の扱いが一つの …

jinmingen
中国が事実上の通貨切り下げ。米国以外はすべて大規模緩和状態へ

 中国の中央銀行にあたる中国人民銀行は、対ドル為替レートの「基準値」の算出方法を …

imfasia
IMFがアジアの成長率見通しを公表。結局は中国頼みという構図が明らかに

 IMF(国際通貨基金)は4月29日、アジア太平洋地域の経済見通しを公表した。そ …

shouhishakinyu
上限金利を元に戻す案を検討開始との報道。結局議論は振り出しに?

 貸金業者における上限金利を以前の29.2%に戻す案が与党内で検討されているとい …

google2014
グーグル2015年1Q決算は、成長鈍化で投資先行。ロボットなどが収益に貢献するのはまだ先

 米グーグルは2015年4月23日、2015年1~3月期の決算を発表した。主力の …

francisco1
排他的になると逆に伝統文化はダメになる。日本人が傾聴すべきローマ法王の説法

 伝統的な価値観を守るためには、新しい価値観を攻撃するのではなく、うまくバランス …

abekaisan20141119
まるで民主党の政策?緊急経済対策は商品券など直接支援が中心

 安倍首相は2014年11月18日、消費増税の先送りと衆議院の解散を発表すると同 …

no image
韓国から通貨スワップ延長の申請未だなし。協定が終了した場合の影響は?

 日本と韓国で締結されている通貨スワップ協定が延長されない可能性が高くなってきた …

no image
EUが金融取引税(トービン税)の導入を決定。欧州はルビコン川を渡ってしまった

 欧州連合(EU)は9日、ルクセンブルクで理事会を開き、金融取引税(いわゆるトー …

asakusa02
訪日外国人観光客は海外旅行に出かける日本人の1.3倍も消費している

 政府は2015年6月5日、観光立国推進閣僚会議を開催し、訪日外国人を2000万 …