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スイスで否決のベーシックインカム。だがAI時代の到来を考えると現実的?

 

 年金など各種の社会保障を廃止する代わりに、すべての国民に一定金額の支給を行う「ベーシックインカム」制度に関する国民投票がスイスで行われた。結果は否決だったが、フィンランドでも試験運用が実施されるなど関心が高まっている。
 タダでお金を支給するなど荒唐無稽にも思える政策だが、これから本格的なAI(人工知能)・ロボット時代が到来することを考えると、そうともいえなくなってくる。

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 スイスでは2016年6月5日、ベーシックインカムの是非を問う国民投票が行われ、反対が70%で否決となった。スイスで提案された制度は、18歳以上の国民に対して毎月27万円、18歳未満には6万8000円を無条件で支給するというもの。

 スイスは世界でもっとも豊かな国の一つであり、1人あたりGDPは日本の2.5倍もあり、物価が高い。物価が2倍と仮定し、日本の現状にあてはめると、18歳以上は13.5万円、18歳未満は3万4000円といったところになるだろう。
 人口構成などを考慮に入れれば、全国民に10万円ずつ支給するというイメージを想像すればよい。家族3人の場合には30万円の収入になるので、それだけで生活することは不可能ではない。

 問題は財源だが、すべての社会保障を廃止し、極めて高い税率の消費税を導入すれば捻出できない金額ではない。ただ、今の社会保障制度に慣れきってしまった国民にとっては、選択しづらい政策であることには変わりないだろう。

 ただ反対意見として多く見られる労働意欲が削がれるという問題については、また別の視点が必要である。

 最近、経済学の分野ではシェアリング・エコノミーやAI・ロボットが台頭した後の社会に関する議論が活発になってきている。
 AIやロボットが普及すると、現存の仕事のうち最大で半分がロボットなどに置き換わるとの予測も出ている。またウーバーやAirbnbに代表されるようなシェアリング・エコノミーが拡大すると、社会全体で必要なリソースも大幅に少なくなる。つまり、同じ経済を維持するのに必要な人的・物的資産が大幅に減少する可能性があるのだ。

 今年3月に来日し、安倍首相と会談したジョセフ・スティグリッツ教授も、シェアリング・エコノミー下では、必要な設備投資額は縮小せざるを得ないとの見解を示している。

 近い将来、労働者の多くが、働きたくても仕事がなく、一方で、社会全体としては食べていけるだけの富を生み出せる状況が到来する可能性が出てきている。ロボットやAIが生み出す富を効率的に再配分する機能として、ベーシック・インカムは有力な選択肢となるかもしれない。

 このところ欧州を中心にベーシックインカムに関する試験的な導入が相次いでいる。フィンランドでは、一部の国民を対象に来年から試験導入が実施されるほか、オランダでも自治体レベルの試験が行われる。

 従来の価値観では、荒唐無稽な政策という印象が強いベーシック・インカムだが、シェアリング・エコノミーやAIの普及が急速に進んでいることを考えると必ずしもそうとはいえなくなってくる。
 少なくとも、労働に対する基本的な認識が180度変わる可能性は十分に考えておくべきであり、その延長線上として、ベーシックインカムについても、議論の対象から外すべきではないだろう。

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