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EU離脱の国民投票が終了。結果がどうなるにせよ英国にとってメリットは少ない

 

 EU(欧州連合)からの離脱の是非を問う英国の国民投票が終了した。大勢は24日の午後に判明する。調査会社が投票終了直後に行った世論調査では残留がリードしているが、最終的な結果がどうなるかはまだ分からない。

 市場はEU離脱をめぐって大荒れとなったが、仮に離脱となっても、すぐに状況が変わるわけではなく、一方、残留となれば、現状が維持されるだけである。どちらの結果になるにせよ、国民投票を行ったことは英国にとってデメリットとなるだろう。

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 英国とEUの関わり方には、通貨、自由貿易、規制、予算という4つの側面がある。これらのすべてを受け入れる形になると、フランスやドイツに代表されるようなユーロ圏国家ということになる。
 英国はもともと独自通貨ポンドを維持しているので、残りの3つについてEUとどのような関係を結ぶのかということが焦点となっていた。

 英国財務省がまとめた報告書によると、英国の製品輸出の半分、サービス輸出の37%がEU向けとなっており、英国産業はEU全域のサプライチェーンに組み込まれているという。
 ひとつの例として、エアバス旅客機の翼に関する製造工程が示されているが、それによるとスペインとドイツで基本部位が製造され、これらは英国で翼として組み立てが行われている。完成した翼はドイツに渡り機器類が実装され、最終的には機体の組み立て工場が置かれているフランスに送られる。

 仮に英国が自由貿易の圏外になってしまうと、こうしたサプライチェーンに関税がかかることになり、英国がこの枠組みからはじき出されてしまうと報告書は主張している。

 しかしながら、EUとの英国の関わり方は、単純な二者択一ではない。仮に離脱が決議されても、自由貿易の協定を維持しながら、EUの枠組みには入らないといった交渉が可能であり、現状とほとんど変わらない状態を維持することも不可能ではない。離脱となった場合には、EUとの長い交渉が始まることになり、不透明感はむしろ拡大するだろう。

 一方、残留が決定しても、現状が継続するだけで市場に大きなプラスがもたらされるわけではない。つまり、残留か離脱かを問う国民投票を実施するということは、市場に混乱をもたらすだけで、メリットがほとんどないというのが現実なのだ。

 英国はこれまでEU離脱を交渉材料としてちらつかせ、自国に有利になるようEUとの交渉を行ってきた。言ってみればEU離脱は「伝家の宝刀」ということになる。

 だが伝家の宝刀は、本当に抜いてしまっては意味がない。今回、どちらの結果になるにせよ、英国が国民投票という切り札を使ってしまったことは、今後の英国にとってあまりよい結果をもたらさないかもしれない。

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