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経産省の主導の「上から」の再編にノー。出光創業家が昭和シェルとの合併に反旗

 

 石油元売り大手である出光興産の創業家は2016年6月28日、同社の株主総会において、昭和シェル石油との合併に反対する方針であることを表明した。石油業界は、経済産業省が合理化を強く要請しており、経済界の一部からは統制経済的との批判も出ていた。出光創業家が本当に反対票を投じた場合、同省が描いてた再編シナリオは見直しを余儀なくされる。

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 出光興産と昭和シェル石油は2015年11月、経営統合について基本合意していた。出光は創業家が約34%を持つ典型的なオーナー企業で、以前は株式の上場すらしていなかった。
 今年の秋から来年をメドに統合する新会社を設立する予定となっており、当初は順調に交渉が進んでいるかに見えた。だが水面下では、会社側と創業家側で折り合いがつかず話し合いが行われてたが、結局、創業家の合意を取り付けることはできなかったようである。

 創業家は合併によって出資比率が大幅に低下し影響力が行使できなくなることを懸念していると思われる。同じようなケースとしては、サントリーとキリンの経営統合の破談がある。出資比率の大幅な低下を嫌ったサントリーの創業家が、最終的には経営統合を望まなかった。

 サントリーの場合は創業家が深く経営にコミットしているが、今回のケースは企業側ではなく政府主導の経営統合であるという点が大きく異なる。

 石油元売り業界は、国内の需要低迷や原油価格の下落などによって、恒常的な過剰供給が続いている。本来であれば、市場メカニズムによって自発的に経営統合や合理化などの動きが出てきてもよいのだが、国家の庇護の下で経営を続けてきた影響は大きく、もはや企業側に当事者能力は失われていた。

 事態を深刻にみた経済産業省は、「エネルギー供給構造高度化法」に基づき、2017年3月末までに設備削減や製油所再編により処理能力を約1割削減するよう要請した。つまり上からの国家統制的な構造改革である。
 これを受けて、JXホールディングスと東燃ゼネラル石油は経営統合を決めており、出光と昭和シェルが続けば、一連の計画が進展するはずだった。もし出光と昭和シェルの合併が破談となれば、経産省が描いたシナリオは頓挫することになる。

 石油業界が生産過剰で合理化が必要なのは明らかだが、そもそも、合理化が必要な状態になっても改革が進んでいないのは、官を頂点とした硬直的なヒエラルキーの中でアニマルスピリッツを失ってしまったからに他ならない。
 企業というのは生き物であり、どのように生存していくのかは企業自身が決めていくしかない。ここで上からの改革を強要しても、本質的な状況は変わらないだろう。

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