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英国のEU離脱。金融危機の可能性はなくなり、具体的な影響を精査するフェーズへ

 

 英国のEU離脱を決定した国民投票から10日が経過し、市場はとりあえず落ち着きを取り戻している。今回の国民投票が金融危機を引き起こすリスクはほぼなくなったが、今後は現実の経済にどの程度の影響が生じるのか精査するフェーズに移行することになる。

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 英国のEU離脱が経済に与える影響で懸念すべきなのは貿易と英国への資本流入の2つである。英国の離脱後、EUとどのような協定が結ばれるのかはまったく分からないが、最悪のケースとして関税が生じるようになった場合、真っ先に影響を受けるのは、英国企業よりもEU全域に展開するグローバル企業かもしれない。

 欧州のグローバル企業は、英国を含むEU域内に複数の拠点を持っており、強固なサプライチェーンを構築している。ここで英国の拠点とのやり取りに関税がかかることになると、サプライチェーンの再構築を迫られ、大きなコスト負担が生じてしまう。
 実際、英国とEUの協定が従来とあまり変わらないものだとしても、交渉期間中、不透明感が続くことになり、新規の投資が抑制されるかもしれない。

 次に懸念されるのは英国への資本流入である。英国は法人税の実効税率が安く、欧州の拠点としてまず英国を選ぶ外国資本は多い。英国から欧州への展開に煩雑な手続きが必要ということになると、英国に投資をする魅力の一部は薄れてしまうことになる。ただ、総合的に見て英国の魅力は高く、英国への投資が一気に萎むとは考えにくいが、投資の伸びが抑制されることになれば、長期的な経済成長見通しには下押し圧力が高まることになるだろう。

 また英国内部では、資金の動きが変わることに伴いその調整に時間がかかる可能性がある。英国はEUに年間140億ユーロ(1兆6000億円)ほどの金額を拠出しているが、EUからの補助金を70億ユーロほど受け取っているので、EUを離脱すれば、実質的には70億ユーロの支出負担が減る。

 この部分についてはトータルでは得するが、これまでEUから補助金を受け取っていたセクターでは、予算を失うことで大きな影響が生じる。全体のバランスが取れるまで混乱が続く可能性があり、その間は成長が抑制される可能性がある。

 以上の問題はケースバイケースという側面もあり、具体的な事例が出てくることでしか市場は認識することができない。その意味では、不透明感が続くことが最大のリスク要因かもしれない。

 - 政治, 経済

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