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生前退位のご意向を政府関係者が否定。日本の民主主義が問われる局面に

 

 天皇陛下が生前退位の意向を示されたことに関して、政府関係者がこれを否定するという事態になっている。もし陛下に本当にご意志があるにもかかわらず、それが放置されるというような事態になった場合、非常に憂慮すべき状況である。まさに日本の民主主義そのものが問われているといってもよいだろう。

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 陛下が生前退位のご意向を持っていると報道されたのは2016年7月13日の夜である。同日、山本信一郎宮内庁次長は「報道されたような事実は一切ない」「天皇陛下にはお気持ちはない」と断言している。
 一方、風岡典之宮内庁長官は14日「いろいろな考えをお持ちになることはありえる」が「コメントは差し控えたい」と発言した。ただ、陛下がご高齢であることをふまえ、一般論としてはあり得ると、少し含みを残した形になっている。

 今回のご意向は、各紙の報道で明らかになったものだが、皇室の報道は他の分野とは異なり段階を踏んで行われる。憶測で報道することは考えられず、陛下がこうした意向をお持ちである可能性は極めて高い。

 もし陛下のご意向が本当であるにもかかわらず、周囲がそれを事実上、拒んでいるのだとしたらそれは非常に憂慮すべき事態である。

 今回、生前退位について議論を進めるということになると、それは皇室典範の改定を伴うことになる。皇室典範の改定については、小泉政権下で女性天皇の可否も含め議論されたことがあったが、議論は大混乱となり、結局、立ち消えになってしまった。小泉首相という傑出したリーダーを持ってしても、皇室の問題を議論することは大きな重荷だったのである。こうした経緯もあり、政府関係者の多くは、皇室の問題にタッチしたがらない。

 戦後憲法では天皇は象徴という位置付けになり、政治の枠組みとは切り離されている。しかし、象徴天皇制だからといって、陛下がご自身の進退についてご意志を示すことができないということはあってはならない。

 陛下が一切の意思を示せないということになってしまうと、それは天皇制の政治利用につながってしまう恐れがあるからだ。
 戦前の明治憲法下では天皇は主権者だったが、一方で英国の伝統に倣い「君臨すれども統治せず」という慣行が続いた。また、明治憲法には輔弼条項というものがあり、これが昭和天皇が戦争責任を回避する根拠のひとつになったともいわれる。

 しかし、軍部はこうした制度を悪用し、昭和天皇の意に沿わない政策を次々に実行し、結果的に日本を破滅寸前にまで追い込んだ。一方、国民に対しては、あたかも天皇陛下の意思であるかのように権威主義的に政策を押し付けた。

 今回、生前退位を検討するということになると、必然的に皇位継承や女性天皇の問題に踏み込まざるを得ず、大混乱となるのは必至である。つまり皇室の問題は政治とは不可分であり、この問題を避けて通ることはできないのである。
 こうした状況であっても議論を尽くし、多くの国民が納得できる皇室像を作り上げることができるのかどうかは、まさに日本国民の民度にかかっている。

 政治的にやっかいな事態を避けたいといった理由で、陛下のご意向が無視されるのだとしたら、後に大きな禍根を残すことになるだろう。

 天皇陛下は日本の国家元首だが、民主国家である日本において主権者は天皇ではなく国民である。参院選で与党が勝利し、憲法改正が視野に入ってきたことで、まさに日本の将来像が問われているタイミングでもある。
 今回の間接的なご意志の表明は、民主国家の主権者として、この国のあり方について議論を尽くして欲しいという、陛下からの強いメッセージと理解すべきだろう。

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