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ヘリコプターマネーを巡る首相官邸の危険な火遊び

 

 首相官邸周辺でヘリコプターマネー政策をめぐる危険な火遊びが進行している。今のところ市場期待を盛り上げ、株価を反転させることが目的だが、こうした手法はすぐに限界がやってくる。イメージ戦略が逆効果となり、本当にヘリコプターマネーに追い込まれるという事態に陥りかねない。

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 安倍首相は2016年7月12日、バーナンキFRB(連邦準備制度理事会)前議長と首相官邸で会談した。バーナンキ氏はかねてからヘリコプターマネーの推進者として知られている。安倍氏がバーナンキ氏と突如会談したことで、市場では同政策に対する憶測が飛び交い、一気に株高が進んだ。

 安倍氏の経済ブレーンとして知られ、今回の会談にも同席した内閣官房参与の浜田宏一・米イエール大名誉教授は、ヘリコプターマネーに関する具体的なやり取りはなかったと発言している。浜田氏の発言が本当であるならば、市場の憶測を計算に入れたパフォーマンスということも考えられる。

 ヘリコプターマネーとは、あたかもヘリコプターからお金をばらまくように、中央銀行が大量の貨幣を市中に供給する政策のことを指す。その定義は多少曖昧だが、大筋では、中央銀行が対価を必要としない形でマネーを供給することと理解されている。

 具体的には、政府が元本や利子の支払いを必要としない債券(無利子永久債)など発行し、これを中央銀行が直接引き受けるといった手法が考えられる。もう少し広い意味では、中央銀行が直接、国債を引き受ける措置のことをヘリコプターマネーと呼ぶこともあり、この場合は、利子の有無は関係ない。

 いずれの方法にせよ、この政策が実施された場合には、将来、インフレになる可能性が極めて高くなり、最悪の場合には通貨の信認が保てなくなるリスクがある。現行の枠組みでは実質的に禁止されているのはこうした理由からである(実際には条件付きで国債の直接引受がすでに行われている)。

 当然、官邸周辺もこのことは理解しており、現時点では本気でヘリコプターマネーを検討しているわけではないようだ。だが一連の噂やバーナンキ氏との会談については、官邸が積極的に動いており、むしろ市場で憶測が広がることを望んでいるように見える。

 官邸としては市場の憶測で株高と円安が進むことは好都合である。アベノミクスは手詰まり感が明確になっており、現実の政策的余地は限られている。
 だが市場の思惑を利用したやり方はすぐに賞味期限が来てしまう。期待値のみで動いた市場は反動も大きく、一連の期待が剥落した後には、むしろ状況が悪化する可能性もある。

 官邸としては市場をうまくコントロールしたつもりになっているのかもしれないが、これは危険な火遊びともいえる。こうした一種のゲームに興じているということは、状況をそれほど深刻には捉えていない可能性が高い。

 そうであれば、近い将来、一連の施策が効果を発揮しなくなった段階において、超長期債の発行などが検討される可能性が高まってくる。だがこれは事実上のヘリコプターマネー政策と見なされる可能性が高く、日本の財政の信認をさらに危うくする。
 ヘリコプターマネー政策と見なしていないのは日本政府だけといった状況になりかねず、こうなってしまうともはや喜劇としか言いようがない。

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