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公的年金の損失5兆円は株価を考えれば妥当だが、本当にリスク運用でいいのか?

 

 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2016年7月29日、2015年度の運用実績を発表した。収益額は5兆3098億円の赤字、収益率はマイナス3.81%となった。昨年後半から続いた株安の影響を受けた形になった。

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 以前の公的年金は安定運用を優先するという立場から、資産のほとんどを国債で運用してきた。しかし安倍政権はGPIFの運用方針を抜本的に見直し、株式を中心としたリスク運用へと転換した。これによって公的年金の運用収益は基本的に株価に連動することになった。

 2015年度は日経平均株価が約13%下落し、ダウ平均株価はほぼ横ばいだった。GPIFのポートフォリオから考えると4兆円から5兆円の損失が出る計算であり、今回の実績はほぼ予想通りということになる。
 GPIFは運用資産の総額が130兆円に達しており、日本株だけでも30兆円の規模がある。よほど変わった運用をしない限り、GPIFの運用成績は市場全体の動きに近くなる。今回の損失が5兆円強だったということは、GPIFの運用はごく普通であり、特に上手でもなく、下手でもないと解釈してよいだろう。

 ただ、公的年金をこうしたリスク運用に振り向けて良いのかについては大いに疑問がある。GPIFは今回の損失公表にあたり、年金は長期的視点に基づくものであり、累積評価が重要と強調している。だが現在の日本の公的年金が置かれた状況を考えるとその評価方法は適切とはいえない。

 日本の公的年金は受給者への支払が、現役世代からの徴収額をはるかに上回っており、毎年の収支が赤字になっている。この赤字を埋め合わせるため、安部政権はよりリスクの高い株式投資への転換を行った。
 GPIFは投資によって毎年得られた収益の一部を、赤字の埋め合わせのため年金特別会計に返さなければならない。つまり累積での収益ではなく、毎期の収益がむしろ重要なのである。

 2015年度は5兆円の赤字を出しているのだから、本来であれば年金特別会計に支払うお金はないはずである。だが2015年度も2750億円が特別会計に支払われ、受給者への支払いに消えた。
 将来、リーマンンショックのような大幅な株価下落が発生した場合には、年金の受給額が減少する可能性もゼロではない。年金財政の赤字を埋め合わせるために、積立金をリスク投資に回してよいのかついては、もっと国民的な議論が必要だったはずだ。

 ちなみに諸外国の公的年金のほとんどは国債で運用されており、株式などのリスク資産は投資対象となっていない(民間の年金は様々)。また日本の公務員年金を運用する国家公務員共済(KKR)は、リスク資産へのシフトを表明しているが、今のところ国債中心の安全運用を維持している(今後のポートフォリオについては不明)。
 今のところ、日本の民間人だけが果敢にリスクに挑む構造だが、これは本当に日本国民が望んだ姿なのだろうか。

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