ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

総額28兆円の経済対策。実質的な金額は6兆円にとどまり、効果は限定的

 

 政府は2016年8月2日、総額28兆円を上回る経済対策を閣議決定した。金額だけを見れば第2次安倍政権発足以後、最大規模ということになるが、実質的には小規模な対策にとどまった。日銀の量的緩和策が限界に近づきつつある中、大型の財政出動を行いたいというのが安倍首相のホンネだろうが、財政問題が重くのしかかる。

abe20160802

 安倍政権は、発足直後の2013年1月に予算規模10.2兆円、事業規模20.2兆円という大型の経済対策を打ち出した。しかし、その後の経済対策は年々規模が小さくなり、2013年12月に発表した経済対策の事業規模は18.6兆円に、2015年1月の対策は3.5兆円に、同年12月の対策は3.3兆円にとどまっている。

 事業規模という点で考えると久々の大型景気対策ということになるが、実態はかなり異なる。事業規模そのものは大きいものの、実際に政府が支出する金額、いわゆる真水の額が小さいからである。

 経済対策の中に民間の支出や融資などの金額が含まれていても、これらが必ずしもGDP(国内総生産)を押し上げるとは限らない。民間の支出の中にはもともと支出が決まっていたものが含まれている可能性あるほか、融資の場合には実行されないケースもあるからだ。GDPの定義上、確実に経済を押し上げるのは政府支出ということになるので、多くの人が真水の金額にこだわっている。

 今回の経済対策のうち、純粋な政府支出は約6兆円にとどまっており(地方分を合わせると7兆円)、確実に効果が見込めるのは基本的にこの部分しかない。政府ではGDPを1.3%押し上げる効果があると説明しているが、現在のGDPの水準において1.3%というと約6兆円である。つまり政府も最初からこの部分しか効果がないということを分かっているのだ。

 しかもこの6兆円の支払いについても少々注意が必要だ。6兆円のうち2016年度2次補正予算で対応するのは約4兆円で、残りの2兆円は2017年度予算で手当される。つまり、残りの2兆円は即効性が期待できない。

 日銀は7月29日の金融政策決定会合において、事実上、追加緩和を見送った。次回の会合で物価や政策の効果について検証するという不可解な説明もあり、量的緩和策の効果について迷いが生じていることが明らかになってしまった。

 目先、景気を浮揚させるのは財政に頼るしかない状況だが、消費増税の再延期を決定したばかりであり、財源が決定的に不足している。今回の補正予算には建設国債が充当されるが、2020年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化させるという政府公約を破棄しない限り、大型の財政出動を実施することは難しいだろう。

 だが無理に財政拡大に突き進めば、将来の金利上昇リスクを高めてしまう。進むにも進めず、かといって後退もできない状況に陥りつつある。
 見かけの金額の大きさとは正反対に、小粒な内容に終始した今回の経済対策は、日本が置かれている状況を如実に反映したものといってよいだろう。

 - 政治, 経済 , , ,

  関連記事

newyork02
それほど悪くなった米国の7~9月期GDP。利上げは可能との判断が増える

 米商務省は2015年10月29日、2015年7~9月期のGDP(国内総生産)速 …

buffett
著名投資家バフェット氏の書簡から読み解く、彼の自信とその限界

 米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏が2012年12月期の最終決算について …

tokyowan
12月8日発表のGDP改定値は上方修正の見込み。ただ全体的な景気動向は変わらず

 財務省は2014年12月1日、7~9月期の法人企業統計を発表した。ソフトウエア …

kousokumuryouka
GDP改定値は政府の目論見通り大幅上方修正。消費税増税はほぼ確実か?

 内閣府は2013年9月9日、4~6月期GDP(国内総生産)の改定値を発表した。 …

sutisenkyo
スーチー氏の大統領就任問題から考える憲法の本質。悪法は法なのか?

 ミャンマー国会は2016年3月15日、アウンサン・スーチー氏の側近であるティン …

tulip
欧州では移住する農業従事者が増加中。そう簡単ではない農業の競争力強化

 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の閣僚会合で日米は合意に至らず、結論は再 …

kyuyomeisai02
春闘を控えベア抑制の動き。個人消費には逆風で、GDPへの悪影響は必至

 春闘の季節が近づいているが、ベースアップを抑制する動きが出てきている。各社には …

abe20140213
「改憲論者」安倍首相の憲法解釈見直し論に対し、党内「改憲論者」から反発の声

 安倍首相の集団的自衛権行使に関する憲法解釈見直しについて、与党内部から批判の声 …

no image
朴槿恵(パククネ)次期大統領候補が死刑廃止に反対を表明。性犯罪者への厳罰を想定

 韓国の次期大統領候補者である朴槿恵氏が、死刑制度廃止に反対する意向を明らかにし …

kabuka
5兆円の損失を公表したGPIFがスマートベータ型運用にシフト。果たして儲かるのか?

 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が保有する銘柄の公 …