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介護離職ゼロに向けて企業に残業免除を義務化。だが現実には機能しない?

 

 安倍政権が掲げる介護離職ゼロに向け、介護者の残業を免除する施策の検討が始まっている。だが低い生産性の下、長時間労働が常態化している日本企業の現場で、どの程度の効果があるのかは不明だ。

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 厚生労働省は、家族の介護をする社員の残業を免除する制度を検討している。企業に残業免除を義務付け、違反した場合には企業名も公表する。
 家族を介護するために仕事を辞める、いわゆる介護離職は年間10万人に達するといわれる。家族の介護に対する企業の理解は薄く、介護と仕事で板挟みになるケースは多い。今回の施策は、残業免除について政府が義務化することで、介護者が企業に気兼ねすることなく定時退社できるようにする狙いがある。

 だが企業における現場の実情は厳しい。日本企業の生産性は諸外国に比べて低いことが知られているが、実際、企業の業務効率は低下する一方だ。過去20年、国内のサービス産業の売上高は横ばいだが、従業員の数はむしろ増加している。つまり同じ売上高の仕事をより多くの人員でこなしていることになる。
 従業員がサボっているのでこのような結果になっているわけではない。企業として儲ける仕組みが出来ておらず、長時間残業をしないと現在の売上高を維持できないという構造的な問題を抱えている。

 こうした状況で残業免除を義務化しても、残業を返上した社員に対しては様々な圧力がかかり、実質的に機能しない可能性が高い。

 そもそも日本の労働法制は、雇用を維持する代わりに、サービス残業を含め、従業員に長時間残業を強いる仕組みになっている。長時間残業を減らし、経営効率を上げるには、雇用の条件を緩くするしか方法はないが、日本の世論は雇用の流動化には否定的だ。

 介護制度にも矛盾がある。日本の介護制度は、基本的に在宅介護が原則となっており、早い段階から施設で介護するという考え方には立脚していない。在宅でもホームヘルパーなどが派遣されるので、家族がつきっきりで介護しなければならないというわけではない。
 しかし、施設によっては休日にはヘルパーが派遣されないケースがあるほか、介護保険の利用金額上限などの問題があり、すべてをヘルパーに頼ることはできないのが実情だ。そうなってくると、家族のうちの誰かが仕事をやめないと、現実問題として介護には対応できないケースが出てきてしまう。

 日本はこれまですべての政策について場当たり的な対応に終始してきた。しかし、成熟国家となり社会や経済の仕組みが根本的に変わりつつある今、こうした対応では限界がある。介護離職の問題は、労働法制や介護制度と密接に関係しており、単体での解決はできない。

 遠回りに見えるが、日本の社会システムを抜本的に見直すことでしか、問題を解決することはできないだろう。

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