ベネッセ新社長がわずか3カ月で辞任。同社経営をめぐって創業家が混乱?
教育大手ベネッセホールディングスが迷走している。プロ経営者であった原田泳幸氏の電撃辞任を受け、福原賢一社長が就任したばかりだが、わずか3カ月で再び社長が交代する異例の事態となった。
新社長に就任するのは、社外取締役の安達保氏。安達氏は現在、米有力ファンドのカーライル・グループの日本法人トップを務めている。
ベネッセは1955年に創業者である福武哲彦氏が福武書店として事業をスタートさせた。当時は中学生向けの図書や生徒手帳の印刷が主業務だったが、やがて、新規事業として始めた通信教育「進研ゼミ」が大ヒット。現在では介護など新規事業にも進出し、5000億円規模の企業になっている。
同社の経営は、息子の總一郎氏が引き継いだが、總一郎氏は自身の引退後、子息に会社を継がせることはせず、相続税対策もあってニュージーランドに移住。資本家として同社に影響力を行使するという道を選択した。
後任社長として白羽の矢を立てたのが、日本マクドナルドのトップを務めた原田泳幸氏であった。
ところが原田氏は就任早々、4000万人分の顧客情報が流出するという想定外の事態に直面。通信教育の会員数は激減し、同社は赤字転落してしまう。原田氏はその責任を取る形で今年の6月に社長を退任した。
後任社長となった福原氏は、野村證券出身。ベネッセ入りしてからは介護事業などで実績を上げ、財務の最高責任者として同社を切り盛りしてきた。創業家の財産を管理し慈善事業などを行う福武財団の副理事長も兼務しており、市場では順当な人事という認識だった。
その福原氏が3カ月で辞任というのは尋常な事態ではない。總一郎氏ら創業家はニュージーランドに移住しているとはいえ、同社株の約3割を保有しており、経営に対しては絶大な影響力を持っている。今回の人事は創業家の決断であることはほぼ間違いない。
上場企業のトップ人事において、ワンポイント・リリーフの人事を行い、その後、有力な後継者を探すというケースは珍しくないが、このような人事が行われるのは、何らかのハプニングで社長が辞任した時がほとんどである。
創業家が後任社長として安達氏を本命にしていたのであれば、それなりの実力者である福原氏をわざわざ、ワンポイント・リリーフに据える意味は薄い。同社のガバナンスをめぐって創業家に混乱が生じているという印象は拭えない。
安達氏は、外資系企業を中心に豊富な経験があるが、ベネッセの事業を直接、舵取りした経験はない。これまでの混乱が大きかっただけに、安達氏が背負うものは大きい。相当な成果を上げないと、市場からの評価を取り戻すことは難しいだろう。
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