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ドイツ銀行の危機は、不良債権問題というより利ざやの縮小による収益悪化

 

 ドイツ銀行の経営破たん懸念が市場のムードを悪化させている。現実に同行が破たんする可能性は低いが、同行は世界でも有数の投資銀行であり、他の金融機関や産業界への影響が大きいことがその理由である。政治的な駆け引きも絡んでおり、しばらくは市場の攪乱要因となるだろう。

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 ドイツ銀行の経営が苦しくなっていることは、今年にはっていから、市場でかなり意識されるようになってきた。4月には同行の株価が15ユーロを切り、直近では一時10ユーロを下回っている。

 欧州にはイタリアのモンテ・パスキなど、膨大な不良債権を抱え、深刻な状況となっている銀行があり、こうしたところと比較すればドイツ銀行の経営状況はむしろ健全な部類に入る。だがドイツ銀行はEUにおける金融システムの要であり、同行がグローバル市場に与える影響は極めて大きい。このため市場はドイツ銀行の経営動向に敏感に反応している。

 ドイツ銀行の問題は不良債権問題ではなく、マイナス金利による利ざやの縮小である。足元のドイツ経済は成長鈍化が見られるものの総じて堅調である。2016年の実質GDP(国内総生産)成長率は1.6%の見込みとなっており、失業率は過去最低を更新した。

 しかしマイナス金利の導入によって銀行の利ざやは縮小しており、これが同行の経営を圧迫している。1年前と比較すると金利収入は1割も減っており、本来であれば投資銀行部門の手数料収入でこれをカバーしたいところである。しかし、最近の市場はあまり動きがなく、手数料収入も伸び悩んだ状態となっている。

 同行の賃金は極めて高く、すべての行員を平均した金額でも1500万円を超える。日本でいうところの総合職社員だけに絞った場合、目もくらむような高額報酬になっていることは間違いない。一定の利益を確保するためには大リストラが必至の状況だ。

 さらにタイミングの悪いことに、米司法省がモーゲージ担保証券(MBS)の不正販売問題に関して、同行に140億ドル(約1兆4300億円)という巨額の制裁金を求めている。交渉である程度までは減額される可能性は高いが、これが実施されれば、増資など資本増強措置が必要となるだろう。

 ドイツは、スペインやギリシャなど債務問題が顕在化した国々に対して厳しい姿勢で臨んできた。このため自国の銀行にだけ甘くすることはできず、少々難しい立場に追い込まれている。
 ドイツ銀行が現実に破たんする可能性は低く、もし経営状況がさらに悪化するような場合には、資本提携など何らかの措置が講じられることになるだろう。ドイツ銀行が持つネットワークは他行にとって極めて魅力的であり、今回の経営危機問題は、世界的な金融再編のトリガーとなるかもしれない。

 - 経済

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