営業は「キャラ」が重要なので、AIが普及しても消滅しないというアンケート結果は本当か?
AI時代になると多くの仕事が消滅するというのは、すでに社会の共通認識となりつつある。だが具体的にどの仕事がなくなるのかという話になると、現実と願望が入り交じる。その象徴的な職種は「営業」のようである。
人材会社であるエン・ジャパンが行ったアンケート調査の結果は非常に興味深いものであった。同社の転職サイト利用者に対する調査では、AIによって代替されにくい職業として1位になったのは営業、2位は経営企画、3位はクリエイティブだった。転職サイトの利用者なので対象は一般ビジネスマンである。ちなみに年齢は35歳以上だという。
同社は、似たような調査を転職コンサルタントに対しても実施している。企業側のニーズをよく知る転職コンサルタントは、AIにもっとも代替されにくい職業として経営者と回答している。2位は経営企画、3位は営業、4位は弁護士だった。
経営者もしくは経営企画部門の人材がAIに代替されにくいということは、多くの人が同意するだろう。ここで問題となってくるのは「営業」である。営業は、もっとも数が多い職種の一つだが、どちらでもランキング入りしている。一般ビジネスマンに対する調査ではトップだ。
もしこの調査結果が本当なら、事務系職業でもっとも多い仕事のひとつがAIによって代替されないということになるが、果たしてそうなのだろうか。
これについて、AIに関する研究者は異なる見解を出している。オックスフォード大学が行ったAIによる職業代替の研究によると、営業系はむしろAIに代替される確率が高い仕事に分類されている。
ただ営業といっても様々である。同大学の研究では、ルート営業や電話営業などは高い確率で代替される一方、金融商品の営業などは代替されにくいと結論付けている。
要するに付加価値の低い営業は簡単にAIに取って代わられ、高付加価値の営業は代替されないという話である。日本の場合、対面がより重視される傾向が強く、諸外国と同じにはならないかもしれないが、低付加価値営業がAIに取って代わられる可能性は高そうだ。
AIは職業を奪うのではなく、低い付加価値の仕事を奪うというのが正しい姿だろう。運転手やパイロットといった仕事は完全に消滅する可能性があるが、AIで消える職業そのものは少ない。職業は残るが、仕事に就けなくなる人が多数出てくるという結果になる可能性が高いのだ。
先ほどのアンケート調査において、営業がAIに代替されない理由としては、「個性」「キャラクター」などが相手との関係構築に重要といった内容が列挙されている。確かに一部の営業マンはこうしたテクニックで生き残れるかもしれないが、現実はそう甘くはないだろう。
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