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NewsPicksを運営するユーザベースが上場。本業はまずまずだが上場を急いだ印象は拭えない

 

 ニュース・アプリ「NewsPicks」を運営するユーザベースが2016年10月21日、東証マザーズに株式を上場した。初値は公募価格を398円上回る2908円とまずまずの滑り出しとなったが、決算内容をよく見ると上場を急いだ印象は拭えない。

newspicks

 世間一般にはNewsPicksの運営企業としての知名度が高いが、同社の本業は法人を対象とした企業・経済情報データベースSPEEDAを提供する事業である。この分野はロイター、ブルームバーグ、日経Quickなどの寡占状況となっているが、これまでデータベースを購入していなかった企業へもアプローチすることで新しいユーザー層を獲得しようとしている。
 ニュース・アプリの運営で一般的な知名度を高め、法人向けのデータベースで稼ぐという仕組みであり、今のところデータベース事業については順調な伸びを見せている。

 だが、本業のデータベース事業とニュース・アプリにどれだけのシナジーが見込めるのかについては何とも言えない。
 データベース事業の2015年12月期における売上高は15億5515万円、部門損失は790万円、直近決算である2016年1~6月期(半期)における売上高は9億9081万円、部門利益は1億7603万円と黒字転換を果たした。
 一方、ニュースアプリ事業は赤字幅は縮小しているものの、2016年1~6月期については売上高が3億8806万円、部門損失が3097万円とまだ稼げる状況にはなっていない。

 NewsPicksは当初、「ジャーナリズムをどこまで追及できるか」(共同経営責任者の梅田優祐氏)など、目もくらむような高邁な理念を掲げていたものの、最近では大手メディアが配信するニュースについて、利用者がコメントを出し合うだけというSNS的なサービスに変化しており、ジャーナリズムとはほど遠い立ち位置になっている。
 ただ、SNS的なサービスにした場合、今度はコミュニティの運営という課題が出てくる。一部の利用者が誹謗中傷を行うというありがちなトラブルも発生しており、これは同社の目論見書にリスク要因として記載された。

 データベース事業という本業の存在を考えれば、ニュース・アプリの運営は安全運転にならざるを得ず、添え物的な事業になってしまうのはある程度、仕方ないだろう。経営的にはむしろジャーナリズムの看板を下ろした方が有利に働く可能性が高い。

 もっとも、ニュース・アプリ事業の位置付けについては、市場関係者の一部から疑問の声も上がっている。同社は2015年4月に重要だったはずのニュース・アプリ事業をなぜか分社化しているからだ。

 分社化されたニュース・アプリ子会社は外部から資金調達を行っており、2015年12月期には持分変動利益4億4433万円を計上している。この利益がなければ上場直前の決算期において同社の最終損益は赤字であった。
 ニュース・アプリ子会社に高いバリュエーションで増資を引き受けた投資家が何者なのか、また何を目的に出資をしたのかは不明である。

 一連の処理は手続き上、何の問題もないが、見方によっては利益のかさ上げとも映り、透明性という観点からは疑義が残る。ジャーナリズムという高邁な理想を掲げる企業としては、クリアな説明が欲しいところだが、もはやジャーナリズム企業とは言えなくなっている同社の現状を考えると、あまり期待できないかもしれない。

 いずれにせよ、上場を急いだと市場から認識されないためには、本業のデータベース事業でしっかりと利益成長する以外に方法はない。2016年12月期の決算で、おおよその状況ははっきりするだろう。

 - マスコミ, 経済, IT・科学 ,

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