物価は何と7カ月連続のマイナス。一方、消費は物価にかかわらずやはりマイナス続き
このところ物価が厳しい状況に追い込まれている。消費者物価指数が何と7カ月連続のマイナスとなっているからだ。このところ原油価格が上がっているので、来年は回復が見込めるとの予想が多いが、経済の基礎体力がない中で物価だけが上昇しても、結局は消費の抑制につながってしまう。
総務省は2016年10年28日、9月の消費者物価指数を発表した。代表的な指標である「生鮮食品を除く総合(コア指数)」は前年同月比でマイナス0.5%となり、物価の下落はこれで7カ月連続となった。「食料及びエネルギーを除く総合(コアコア指数)」もゼロ%となっており、物価上昇はストップしてしまった。完全にデフレ経済にシフトしたとみることもできるだろう。
原油価格の影響を受けるコア指数は2014年の段階から下落が始まっていたが、原油価格の影響を受けないコアコア指数は何とか持ちこたえていた。だが、コアコア指数も2016年に入ると下落が始まり、結局、すべての指標が横ばいもしくはマイナスになった。
消費も低迷している。同じく総務省が発表した9月の実質消費支出は前年同月比マイナス2.1%となり、こちらも7カ月連続のマイナスである。もっとも7カ月連続といっても、今年に入ってプラスになったのは2月の1回だけであり、2015年の8月からずっとマイナスが続いている。
問題なのは物価の上昇、下落にかかわらず消費が弱いことである。原油価格の影響で物価が上がると購買力が減って消費が落ち、物価が下がるとデフレマインドで消費が落ちる。日本経済は消費のための基礎体力がない状況であり、そのような中で物価を動かしても、結果は同じである。
このところ原油価格は反転上昇しているので、来年にかけては消費者物価指数は上昇することになるかもしれない。だが消費の基礎体力が変わらなければ、消費そのものは伸びないだろう。
金融政策や財政政策は基本的な経済のメカニズムが機能している国でなければ、うまく作用しない。この点において米国と日本とでは大きな差がある。日本は制度疲労を起こしている従来型経済構造の改革をひたすら回避してきた。この状況が続く限り、金融や財政の効果は限定的だろう。
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