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トランプ大統領の登場で懸念される、日露急接近による地政学的リスク

 

 混乱の中で投票日を迎えた米大統領選挙は、土壇場でトランプ氏が逆転勝利するという驚くべき結果となった。トランプ氏の大統領就任で米国の安全保障政策が変化する可能性が高まっているが、これは日本とロシアの関係にも影響を与える。日本は慎重に行動しなければ大きな地政学的リスクを抱え込む危険性がある。

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 トランプ氏は選挙期間中、何度も日米安保の見直しに言及してきた。トランプ氏の発言の背景にあるのは、このところ米国で顕著な盛り上がりを見せている自国中心主義といってよいだろう。
 米国は、かつてモンロー主義を標榜していたことからも分かるように、もともと引きこもりの国であり、国際問題に対する関心は極めて低い。現在の米国はサウジアラビアを抜いて世界最大の石油産出国となっており、すべてのエネルギーを自給できる環境にある。つまり、これからの米国は他国のことなど一切気にせず国家を運営できるのだ。

 実際にトランプ氏が大統領になれば、現実的な対応を迫られるので、日米安保がすぐに見直しの対象になる可能性は低い。だが中長期的に見た場合、アジア太平洋地域の安全保障体制は確実に変化してくるだろう。国際秩序への関心が弱まり、場合によっては、米国はアジア太平洋地域における中国やロシアの振る舞いを黙認することになるかもしれない。

 現在、安倍政権は「独自外交」を標榜しており、ロシアとの関係強化を模索している。トランプ政権がアジア太平洋地域に対してあまり関心を示さない場合、日本はロシアとの外交に前のめりになる可能性がある。だがこの動きは地政学的に見ると非常に危険だ。

 現段階においてさえ、北方領土問題の解決とセットで、シベリア鉄道の日本延伸やパイプラインの敷設という話が浮上している。もし、鉄道やパイプラインで日本とユーラシア大陸が接続されることになると、地政学的には極めて大きなバランスの変化をもたらす。

 これまで、安全保障については日米同盟で担保し、中東とインドネシアからエネルギーを調達するというのが日本の基本的なスタンスであった。これらはすべて海洋を基礎としており、地政学でいうところのシーパワーということになる。
 ところが、ロシアと1カ所でもパイプラインや鉄道が接続されれば地政学的な意味は180度変わる。日本はユーラシア大陸とつながったランドパワーの圏内に入ってしまうのだ。日本人がどう考えようと、諸外国はそう見なすだろう。

 日本国内ではロシアとの経済協力について、景気の浮揚効果といった視点でばかり議論されているが、ロシアのホンネは経済などではない。日本を取り巻く地政学的なバランスを崩すことが最終目的であり、そこに日本が前のめりで加担することは危険性が高い。

 日本とロシアは地政学的に見て基本的に利害が対立する国であり、歴史もそれを証明している。かつて日本は、各国と「独自外交」を繰り返した結果、最後はほぼすべての国を敵に回し、ポツダム宣言に追い込まれるという失態を経験している。
 日米同盟の変化が、かつての日英同盟の変化と同じ結果をもたらすのかどうかは、日本人の決断にかかっている。

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