ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

トランプ大統領の登場で懸念される、日露急接近による地政学的リスク

 

 混乱の中で投票日を迎えた米大統領選挙は、土壇場でトランプ氏が逆転勝利するという驚くべき結果となった。トランプ氏の大統領就任で米国の安全保障政策が変化する可能性が高まっているが、これは日本とロシアの関係にも影響を与える。日本は慎重に行動しなければ大きな地政学的リスクを抱え込む危険性がある。

trump201611

 トランプ氏は選挙期間中、何度も日米安保の見直しに言及してきた。トランプ氏の発言の背景にあるのは、このところ米国で顕著な盛り上がりを見せている自国中心主義といってよいだろう。
 米国は、かつてモンロー主義を標榜していたことからも分かるように、もともと引きこもりの国であり、国際問題に対する関心は極めて低い。現在の米国はサウジアラビアを抜いて世界最大の石油産出国となっており、すべてのエネルギーを自給できる環境にある。つまり、これからの米国は他国のことなど一切気にせず国家を運営できるのだ。

 実際にトランプ氏が大統領になれば、現実的な対応を迫られるので、日米安保がすぐに見直しの対象になる可能性は低い。だが中長期的に見た場合、アジア太平洋地域の安全保障体制は確実に変化してくるだろう。国際秩序への関心が弱まり、場合によっては、米国はアジア太平洋地域における中国やロシアの振る舞いを黙認することになるかもしれない。

 現在、安倍政権は「独自外交」を標榜しており、ロシアとの関係強化を模索している。トランプ政権がアジア太平洋地域に対してあまり関心を示さない場合、日本はロシアとの外交に前のめりになる可能性がある。だがこの動きは地政学的に見ると非常に危険だ。

 現段階においてさえ、北方領土問題の解決とセットで、シベリア鉄道の日本延伸やパイプラインの敷設という話が浮上している。もし、鉄道やパイプラインで日本とユーラシア大陸が接続されることになると、地政学的には極めて大きなバランスの変化をもたらす。

 これまで、安全保障については日米同盟で担保し、中東とインドネシアからエネルギーを調達するというのが日本の基本的なスタンスであった。これらはすべて海洋を基礎としており、地政学でいうところのシーパワーということになる。
 ところが、ロシアと1カ所でもパイプラインや鉄道が接続されれば地政学的な意味は180度変わる。日本はユーラシア大陸とつながったランドパワーの圏内に入ってしまうのだ。日本人がどう考えようと、諸外国はそう見なすだろう。

 日本国内ではロシアとの経済協力について、景気の浮揚効果といった視点でばかり議論されているが、ロシアのホンネは経済などではない。日本を取り巻く地政学的なバランスを崩すことが最終目的であり、そこに日本が前のめりで加担することは危険性が高い。

 日本とロシアは地政学的に見て基本的に利害が対立する国であり、歴史もそれを証明している。かつて日本は、各国と「独自外交」を繰り返した結果、最後はほぼすべての国を敵に回し、ポツダム宣言に追い込まれるという失態を経験している。
 日米同盟の変化が、かつての日英同盟の変化と同じ結果をもたらすのかどうかは、日本人の決断にかかっている。

 - 政治 , , , ,

  関連記事

family3nin
課税対象の「個人」から「世帯」への見直しは、アベノミクスにも逆行する

 政府は少子化対策のひとつとして、所得税の課税対象を「個人」から「世帯」に変更す …

netaniyafu
イスラエルがシリアを空爆。オバマ政権二期目を前に、ネタニヤフ首相が先制パンチ

 シリアの国営通信は1月30日、同国の首都ダマスカス近郊にある軍の科学研究施設が …

koikeyuriko02
都議会のドン内田氏が引責辞任。小池氏はダメ押しで新党結成との噂も

 自民党東京都連は2016年8月4日、幹部会合を開き都連会長の石原伸晃経済再生相 …

tennouheika02
天皇陛下が生前退位のご意向。皇室典範に関する速やかな議論が必要

 天皇陛下が「生前退位」の意向を示されていることが明らかとなった。現行の皇室典範 …

tunisia
アラブの春においてチュニジアだけがうまくいく理由は?

 チュニジア制憲議会は1月26日、基本的人権の尊重、表現や信教の自由、男女平等を …

no image
韓国ソウルの放射能アルファルト問題。結局住民は大量被曝していた

 昨年11月に韓国ソウル市内のアスファルトから高い放射能が検出された問題で、ソウ …

vaticanheri
体育会系にミュージシャンにTV司会者。次期ローマ法王候補者は個性派キャラ揃い

 ローマ法王ベネディクト16世が、2月28日夜正式に退位した(本誌記事「存命中の …

kuroda
日銀次期総裁は黒田氏。財務省と政権で痛み分け?金融政策のカギは岩田副総裁

 政府は3月19日に退任する日銀の白川総裁の後任に、元財務官でアジア開発銀行総裁 …

no image
アラブの春の副作用?イスラム圏で時代に逆行する出来事が連発

 アラブの春をきっかけに民主化運動が進んでいるかのよう見えるイスラム諸国で、時代 …

kidera
中国大使の木寺氏が着任。真紀子大臣に責められ病気になっちゃった人だけど大丈夫?

 丹羽中国大使の事実上の後任となる木寺昌人駐新中国大使が25日着任した。木寺氏は …