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日本は著作権解釈もガラパゴス?。独自解釈が行き過ぎると国際競争でまた敗北するゾ

 

 本や漫画の電子化を請け負う事業が著作権侵害にあたるとして、作家の東野圭吾氏、浅田次郎氏、漫画家の弘兼憲史氏ら7人が、電子化代行業者7社に対して、複製行為の差し止めなどを求める訴訟を東京地裁に起こした。

 タブレットPCやスマートホンの普及によって、紙に印刷された本をスキャナで読み取り、電子機器上で閲覧する利用者が増えている。
 自身が本をスキャンするのは手間がかかることから、この作業を代行する業者が続々と登場している。電子化の作業のことを自分で料理を作ることに例えて「自炊」と呼ぶことから、このような代行業者は通称「自炊業者」ともいわれている。

 作家らはこの行為が著作権侵害にあたるとしてこれらの業者を訴えている。だが、私的利用であれば複製が合法なのは当然であり、問題は業者がこれを代行することについてどう考えるかである。

 著作権法では「使用するものが複製することは可」としており、業者を違法と考える人は、委託を受けていたとしても、使用する本人ではないのだからダメという立場だ。
 また代行業者に依頼する人の中には、最初から電子データを販売する目的を持っている人が存在していることを違法の根拠とする人もいる。一方、業者を擁護する人は、複製はあくまで利用者本人の意思であり、契約に基づいて業者複製するのは何ら問題ないと主張している。

 やっかいなことに日本では著作権の概念が諸外国とは異なった形で流布しており、このことが著作権に関する諸問題の解決をさらに困難にしている。

 著作権の本来の意味は、第三者が勝手に複製して利益を上げることを禁じる考え方であって、複製そのものを禁止するものではない。複製行為がそのものが不当に利益を上げることにつながっていなければ、原則として複製行為を禁止することはできないのである(これを禁止すると所有権という重要な人権を侵害してしまう)。著作権者に対しては、あくまでビジネス上の権利を保護することが重要となる。

 だが日本では複製そのものが違法であるかのような概念が主流となってしまっている。その意味で「自炊」業者の存在というものは著作権について議論する非常に材料といえる。議論を重ね社会的なコンセンサスを得るのが望ましい姿であり、一気に司法で解決すべき問題ではないと考える。
 もっとも日本では、ビデオテープのダビング・サービスなど、複製を代行するビジネスはことごとく違法と認定されてきた過去があり、今回のケースも問答無用で違法と認定される可能性が高い。また著作権の概念が諸外国と異なるのも、それによって利益を得ている一部の既得権益者の意向が強く働いているという背景もある。

 日本において著作権の概念が諸外国と異なり、議論が深められていないという状況は、知的財産権をめぐる国際的な争いにおいても不利になる可能性がある。欧米のコンテンツ会社の中には、日本だけが著作権の概念が異なることを利用して、日本でのみ著作権侵害による損害賠償請求を行い利益を上げようという動きも見られる。

 「自炊」代行業者の存在やその社会的扱いについては、もっと幅広い議論が展開されることを期待したい。

 - マスコミ, 経済, IT・科学

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