ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

もはや制御不能。東芝が米国原子力事業で再び巨額損失。債務超過の可能性も

 

 経営再建中の東芝は2016年12月27日、米国原子力事業において数千億円規模の損失が発生する可能性があると発表した。9月末時点における自己資本は約3600億円しかなく、この多くが吹き飛ぶことになる。同社は再び存続の危機に立たされることになった。

toshiba03
 損失が発生するのは、東芝米子会社のウェスチングハウス(WH)が2015年12月に買収した企業。買収後に資産価値を精査したところ想定よりも大幅に価値が下回ったという。損失の金額は確定していないが、数千億円規模になるとしており、確定すれば2期連続で巨額損失を計上することになる。
 ちなみに9月末時点における株主資本はわずか3600億円。総資産に対する株主資本比率は7.5%しかない。もし今回計上する損失額がこれを上回れば債務超過に転落する。仮に数字上、プラスになっても自己資本がゼロに近い状況であることに変わりはない。同社は金融機関に支援を仰ぐとしているが、何らかの抜本的な救済策がなければ、存続が危ぶまれる事態である。

 実は今回、巨額の損失が発生する可能性があることは、以前から指摘されていた。同社は累計で数千億円の金額を投じてWHを買収したが、WH社の経営が厳しい環境にあることは周知の事実であった。だが、買収金額はWH社の実際の資産価値を大きく上回っており、その分は、のれん代として同社の資産に計上されている。WH社以外の買収も含めると、のれん代は一時期6700億円にも達していた。
 買収後もWH社の経営は上向かず、本来であれば、すみやかに損失を計上すべきところだが東芝はなぜかこれを先送りし、2016年の3月期決算でようやく損失を計上している。

 WH社は状況を打開するため、米国の原子力サービス企業CB&Iストーン・アンド・ウェブスター社(S&W)と提携し、原発建設のプロジェクトを積極的に進めてきた。ところが、プロジェクトがうまく進まず、S&Wは巨額の損失を抱えることになり、費用分担をめぐってWHと対立する状況となった。

 結局、東芝はWHを通じて2015年12月にS&Wを買収する形になり、両社は実質的に和解したが、この案件は、東芝とS&W社における紛争解決の手段という意味合いが強かった。つまり、潜在的な損失を抱えた企業を引き取ったわけであり、買収後にその損失が顕在化することはあらかじめ予想されていたことになる。

 前期のWHに関する損失もそうだが、損失が出ることが分かっていながら、市場への開示は極めて遅い。どのタイミングで損失を計上するのかについては、基本的に会社側の判断に任されており、明示的なルールがあるわけではない。そうであればこそ、開示のタイミングには会社としての誠意が示されることになる。

 その意味では、東芝はもはや制御不能の状況であり、上場企業としての体をなしていない。資本構成や経営体制も含め、抜本的な改革を実施しなければ、同社の存続は難しいだろう。半導体部門の分離、あるいは原子力事業の切り出しなど、実質的な解体も視野に入ることになりそうだ。

 - 経済 ,

  関連記事

no image
65歳までの雇用を義務付ける高齢者雇用安定法が可決。若年層の雇用は絶望的

 定年後も希望者全員を65歳まで雇用することを義務付ける改正高年齢者雇用安定法が …

keizaizaisei201511
GDP600兆円の具体策について議論始まる。最終的には3%の賃上げで実現?

 安倍首相が「新三本の矢」で掲げた名目GDP600兆円の目標について、その具体策 …

hanedanarita
羽田・成田の地下鉄建設に年金と生保資金を活用。本当に大丈夫なのか?

 国土交通省は2020年代の開業を目指している羽田・成田を結ぶ地下鉄路線の建設に …

machikado
景気回復を示す指標が相次ぐ。ただ先行指標は踊り場を入りを示唆?

 景気の回復を示唆する指標が相次いでいる。消費動向調査による消費者心理は5カ月連 …

swis201405
最低賃金を2500円にする国民投票を行ったスイスの驚くべき実態とは

 最低賃金を何と2500円にするという驚くべき国民投票がスイスで行われた。結果は …

no image
資産家夫婦殺害事件とJASDAQ粉飾疑惑企業を結びつける点と線

 スイス在住で日本に一時帰国していた資産家夫婦が行方不明になっている事件で、2人 …

amazondorone
民泊にドローン宅配。規制緩和は特区限定で、なぜか外資系企業ばかり

 政府は、国家戦略特区において小型無人機ドローンによる宅配を認める方針を固めた。 …

roujin03
イタリアで若者のために高齢者の早期退職を促す動き。だが社会全体の負担は増加?

 改正高齢者雇用安定法の施行によって、日本では生涯を通じて働くことが可能になって …

asomof
為替介入も辞さずという麻生発言。日本側の動きを束縛してしまった可能性も

 日銀が追加緩和を見送ったことから、為替市場では急激な円高が進んでいる。麻生財務 …

kodomonote
政府が子供の貧困対策を本格化。だが、支援は民間による基金

 政府が貧困家庭の子供に対する支援の強化を検討している。企業や個人に寄付を呼びか …