ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

監視カメラの是非に関する議論。プライバシーが問題なのではない!

 

 単純に画像を撮影するだけなく、被写体の顔を自動判別する機能を搭載した新しいカメラが増えているという。
 読売新聞の報道によると、東京都江東区の大型商業施設「ららぽーと豊洲」では、施設運営会社が店舗案内のディスプレーに小型カメラを設置。画像認識ソフトを使って視聴した人の性別や年代を分析することでマーケティング活動に反映させているという。記事では「専門家からルール整備が必要との声が上がっている」と結んでいる。

 日本は世界的でもトップクラスの監視カメラ大国。JRや地下的の主要駅だけでも6万台近くのカメラが稼動しており、全国では累計300万台以上設置されているという。
 こういった監視カメラをめぐっては「監視カメラが市民のプライバシーを奪う」として反対する声もあがっているほか、ネットなどにおいても監視カメラの是非をめぐって議論が戦わされている。

 だが不思議なことに、監視カメラの設置について問題提起される内容のほとんどが「プライバシーの侵害」に関するもの。「ららぽーと」のケースは防犯用の監視カメラではないものの、記事のトーンはやはりプライバシー侵害の延長線上にある。

 だがプライバシーを論点にしたカメラ設置の是非論は、カメラ設置がもたらす負の側面を矮小化させてしまう危険性がある。
 繁華街にカメラを設置して不特定多数の人物を撮影したところで、そのカメラ映像から得られる情報などたかが知れている。大したプライバシーの侵害にならないことはほぼ明白であり、これが許容されないとなるとTVのニュースで街頭を撮影することも不可能になってしまう。実際、カメラ設置に賛成する人の多くは、プライバシーを理由に反対する人を過剰反応と考えている。

 だがカメラ設置に関する本当の問題は一般人のプライバシーなどではない。警察が多数のカメラ映像を同時に収集し、恣意的にこれを分析することによって、冤罪が発生したり、政治的な権力闘争に悪用されることが問題なのである。
 監視カメラの映像はソフトウェアと組み合わせることによって、その有用性が飛躍的に増大する。顔認識ソフトを用いて多数のカメラ映像をリアルタイムに分析すれば、特定の人物に関するスキャンダルを容易に見つけ出すことができるようになる。この分析結果が、自白の強要につながったり、政治家の権力闘争に利用される事態になれば、それは大変危険なことである。分析結果の取り扱いに厳重なルールを設ける必要があるのはこういった事態を防ぐためである。

 監視カメラを導入するのであれば、その運用に厳格なルールを設けることはもちろん、第三者によるチェック機能の設置も必要だ。併せて証拠主義の徹底化や取調べの可視化といった司法改革とセットで議論することが望ましい。設置のデメリットを上回るだけの成果を客観的数字で示し、社会的なコンセンサスを得ることも重要である。

 もし監視カメラの導入を推進する側が、あえて一般人のプライバシーという話題で話を矮小化させたいという意図があるのなら、それこそ憂慮すべき事態である。この問題に対する大手マスコミの姿勢は底が浅い。

 - マスコミ, 政治, 社会

  関連記事

todai
内閣府調査研究。大卒者、院卒者の4人に1人が学歴に見合う仕事をしていない?

 大学生や大学院生の4人に1人が教育過剰(同じ学歴を獲得したにもかかわらず,より …

no image
ナイジェリアの公立学校で中国語教育始まる。国家覇権と言語は一体の関係

 中国が積極的に開発援助を行っているアフリカのナイジェリアで、公立学校における中 …

maruhi
特定秘密保護法案に関する日本人の何ともお粗末な議論

 政府は10月4日、特定秘密保護法案に関するパブリックコメントの結果を公表した。 …

jenova
ジェノバの港でコンテナ船が管制塔に激突。50メートルの管制塔は完全崩壊

 イタリアのジェノバ港で5月7日、大型のコンテナ船が港の岸壁にある高さ50メート …

no image
元外交官の佐藤優氏がはからずも明らかにした外務官僚の驚くべき怠慢

 野田首相が突然解散を決定したことで、日本外交に混乱が生じている。  日本とロシ …

kansha
公務員宿舎の家賃を2倍に値上げ。公務員たちのトンデモなホンネとは?

 政府は、これまで批判の声が大きかった国家公務員宿舎の家賃を2倍に引き上げる方針 …

chiamujinki
日本を尻目に中国が着々と無人機を開発。ガラパゴスの影響はこんなところにも

 航空業界の国際見本市「北京国際航空展」が9月25日から中国・北京で開催されてい …

seoulapart
不況なのに家賃高騰?経済が低迷しつつある韓国で奇妙な現象が発生する理由とは?

 経済成長が鈍化しているにも関わらず、家賃が急騰するという奇妙が現象が韓国で起こ …

abe20130113
安倍首相の訪米を前に、与党内でTPPをめぐる動きが活発化

 安倍首相の訪米日程が近づいてきたことから、環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐ …

g8
G8でグローバル企業の租税回避対策が骨抜きになってしまう理由

 シリア問題と並んで主要国首脳会議(G8サミット)の議題の一つであった租税回避問 …