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介護保険改正法案が閣議決定。所得の高い高齢者の自己負担率がさらに増加

 

 政府は2017年2月7日、介護保険の自己負担率の見直しを盛り込んだ介護保険法改正案を閣議決定した。所得が高い高齢者の自己負担率については2015年8月に1割から2割に上げたばかりだが、高所得者の負担をさらに増やすことで介護保険の支出を抑制する。

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 介護保険は原則として1割の自己負担で介護サービスを受けることができる。だが2015年8月からは自己負担率の見直しが行われており、条件によって異なるものの、実質的な所得が280万円以上ある高齢者の自己負担は2割となった。
 今回の改正では、1人暮らしで年収が340万円以上ある人の自己負担は、来年8月以降、2割から3割に引き上げられる。実際に負担が増加するのは、利用者のうち3%程度だという。

 介護保険制度は高齢化の進展に伴い給付と支出のバランスが取れなくなってきている。しかも、状況はさらに厳しくなることが予想されている。介護の業界でよく言われているのが、介護の2025年問題である。
 厚生労働省は介護人材の需給推計を行っているが、それによると、2025年度には全国で253万人の介護職員が必要となるが、現状のままでは約215万人しか人材を確保することができず、約38万人の介護職員が不足するという。

 2025年に焦点が当たっているのは、ちょうど団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になるタイミングだからである。75歳を超えると要介護認定を受ける人の数は急増するため、介護保険の負担が急増すると考えられている。

 人手不足を解消するには介護職員の賃金を大幅に上げる必要が出てくるが、すでに厳しい状況にある介護保険財政を考えると大幅な賃上げは難しい。結局のところ、歳出を抑制する以外に方法はなく、とりあえずは所得のある高齢者の負担増から手を付けたわけだ。

  こうした措置を講じても、介護保険の財政問題は抜本的に解決できる話ではない。最終的には自己負担率の引き上げがあらゆる世帯に及び、家族の負担は増えるだろう。
 安倍政権では、家族の介護を理由に仕事を断念する、いわゆる「介護離職」をゼロにすることを目標として掲げている。だが自己負担率の増加は完全に逆効果であり、目標の実現はさらに遠くなる。

 極めて厳しい状態に置かれている日本の財政を考えた場合、国民負担の大幅な増加といった根本策を講じなければ、給付の抑制を避けて通ることはできない。結局のところ、欧米型の個人で完結した社会保障は実現できず、家族が面倒を見るという前近代的なシステムが続くことになる可能性が高い。

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