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残業上限は「100時間」それとも「100時間未満」?という不毛な議論

 

 政府が導入を検討している長時間労働の上限規制について、最終的に「月100時間未満」にすることで労使の合意が成立した。政府の規制であるにもかかわらず安倍政権は具体的な基準策定を労使交渉に丸投げしており、最後は首相裁定で100時間未満にするという玉虫色の決着となった。

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 政府は働き方改革の一環として残業時間の上限規制を検討してきた。日本では労働基準法などで法定労働時間が決められており(1日8時間、週40時間)、原則としてこの基準を超える仕事をさせることはできない。

 だがこの法律には抜け穴があり、労働者と企業が協定を結んだ場合に限り、法定労働時間を超えて仕事をさせることが可能となっている。これがいわゆる36協定(サブロク協定)である。この協定が存在していることで企業は事実上、無制限に社員に残業を強いることが可能となっていた。

 もっとも正社員に限っては、労働者の側にも恩恵があった。日本企業の多くは正社員の終身雇用を大前提としており、仕事が多い繁忙期に合わせて社員を採用してしまうと、人が余って経営が維持できなくなる。このため、多くの企業が常に少なめに正社員を採用し、繁忙期には残業で乗り切る方式を導入せざるを得なかった。つまり日本の長時間残業は、正社員の終身雇用を保障することとの引き換えであった。

 だが、こうした雇用慣行も徐々に機能不全を起こしつつあり、長時間労働が社会問題化してきた。電通の過労自殺事件などをきっかけに、政府は本格的な検討を開始したが、いざ法律を改正するとなると基準値を何時間にするのかで調整は難航。結局、安倍政権は労使交渉に丸投げしてしまった。

 経営側は繁忙期については100時間の残業を認めるよう求めてきたが、過労死の認定ラインが1カ月100時間程度に設定されていることから、労働側は到底受け入れられないと主張。最終的には「100時間」なのか「100時間未満」なのかで交渉が続き、首相が労働側の顔を立て、100時間未満で裁定するという茶番劇で交渉は終了した。

 現実問題として、100時間でも100時間未満でも、長時間残業を社員に要請できるという点では何も変わっておらず、過労死のガイドラインである100時間との整合性はまったく取れていない。

 日本企業で長時間残業がなくならい最大の要因は企業が生み出す付加価値が低く、それによって生産性が上昇しないことである。労働集約的な仕組みのまま労働時間だけを減らしても、今度は生産が減少するという副作用も発生しかねない。
 長時間残業は、本来、経営そのものの問題だが、この状況では、時間制限の話だけにとどまりそうである。こうした曖昧な決着方法では、長時間労働の慣行はそう簡単にはなくならないだろう。

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