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実質賃金は下がっているのに、社会的満足度が過去最高の理由

 

 内閣府は2017年4月3日、「社会意識に関する世論調査」の結果を発表した。現在の社会に対して全体的に満足していると答えた人は65.9%と調査開始以来、最高水準となった。労働者の実質賃金が低迷する中、意外にも社会に対する満足度は上がっているようだ。

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 同調査は、国民の社会に対する意識の把握を目的に内閣府が毎年実施している。調査項目は入れ替えが行われるが、社会全体について満足しているのかを問う項目は2009年から盛り込まれている。

 2009年時点において、社会に満足している人の割合は39.9%だった。満足する人の割合は年々上昇してきたが、顕著に満足度が上がったのは2013年の調査からである。2013年は53.4%に、2014年は60.8%に達したが、この時期はアベノミクスの時期と符合している。

 アベノミクスの期間中、実質賃金は低下が続き、労働者の実質的な所得は低下している。商品の値上げも相次ぎ、生活実感は苦しくなっていた可能性が高い。だが満足度の結果はこれとは正反対になっている。

  一般的にこうした調査の結果は経済的な環境との相関が高いとされる。だが、この調査は社会的な満足度を問うものなので、経済的な状態にすべてが左右されるわけではない。自民党は戦後、一貫して利益誘導型の政治を行ってきたが、安倍政権は「安心」や「強いニッポン」など情緒に訴えかける政治であり、その点において従来型の自民党政治とは大きく異なっている。こうした情緒的な戦略が功を奏している可能性は高い。

 経済的な面については別の見方もできる。アベノミクスで実質賃金が低下したのは円安による輸入物価の高騰が原因であり、名目上の賃金はわずかだが上昇している。多くの労働者は名目上の賃金が上がったことで生活が豊かになったと認識した可能性がある。実際、満足度の上昇ペースと名目賃金上昇のペースはおおよそ符合している。

 現在、量的緩和策の先行きについては専門家の間でも意見が分かれている。このまま量的緩和策を続けた場合、物価の上昇に賃金が追い付かず、実質賃金が下落する可能性もある。だが社会の満足度が名目賃金に依存するのだとすると、インフレ政策を続けることは政治的には意味があるという解釈になる。

 インフレによって諸問題を解決してしまおうという試みは歴史的に何度も繰り返され、その弊害についても幾度となく指摘されてきた。だがインフレはその影響が顕著になるまでは、国民の満足度に大きく影響しない。これもインフレ政策への誘惑が存在する理由のひとつかもしれない。

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