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大統領の独裁化につながるトルコの国民投票にドイツ人が動揺している理由

 

 大統領権限の強化を狙ったトルコの国民投票で賛成が反対を上回ったことで、ドイツ国内に動揺が広がっている。民主国家のメリットを100%享受しているはずの在独トルコ人の多くがエルドアン大統領による権力強化に賛成票を投じたからである。民主主義と保守主義の狭間で揺れ動くトルコ人の心情は日本人にも通じるものがある。

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 トルコのエルドアン大統領は、近年、独裁主義的な傾向を強めており、反対勢力やメディアの弾圧を行っている。エルドアン氏は自身の権限をさらに強化するため、憲法改選を目論んでおり、国民投票の実施に踏み切った。

 半ば民主主義の否定につながる今回の憲法改正案については民主派を中心に反対の声が大きく、当初は否決される可能性が高いともいわれていた。だが結果は賛成が51.3%、反対が48.7%と僅差でエルドアン氏の勝利となった。

 この結果に驚愕しているのがドイツである。その理由は、ドイツに移住し民主的で豊かなドイツ社会に馴染んでいると思われていた在独トルコ人の過半数がエルドアン氏による独裁強化に支持票を投じたからである。

  ドイツ人は民主的で豊かなドイツ社会での生活を経験すれば、どんな人でも民主的な精神を身に付けられると考えており、これが世界の民主化に貢献すると考えている。そうであればこそ、国内で摩擦が生じることが分かっていながらも移民を積極的に受け入れてきた。

 ところがフタを開けてみると、参政権を持つ在独トルコ人の過半数が、エルドアン氏の独裁強化に賛成票を投じてしまった。しかもその中にはドイツ社会で成功した裕福なトルコ人も多数含まれている。一部のドイツ人は、こうした在独トルコ人に対して、民主主義の恩恵を100%享受しておきながら、母国における非民主的な動きを支持するのは好ましくないと厳しく批判している。

 こうした一種、矛盾した言動は、成功したトルコ人ですらドイツ国内では疎外感を味わっているという現実を如実に表している。ドイツで豊かな暮らしをしているトルコ人は、自身の矛盾には気付いているだろうが、心情的には欧米流の民主的な価値観を100%受け入れることができない。そうなるとドイツは何のために移民を受け入れてきたのか分からなくなってしまう。

 こうしたトルコ人のアンビバレントな感情は欧米流の民主主義と保守的な価値観との間で揺れ動く日本人にも共通したものといえる。

 民主主義を標榜する人は、多くが経済的・社会的に成功した人であり、彼等はどんな人でも民主的な価値観は身に付くものと考えている。だが、全員がそれを実現できるとは限らない。豊かで民主的な欧米型社会とそれ以外の社会との断絶は想像以上に大きいのかもしれない。

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