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日銀が買い入れをコミットした賃上げETFが事実上の売買ゼロ状態に

 

 積極的に賃上げを実施する企業の株式を組み入れた上場投資信託(ETF)が危機的状況に陥っている。以前から懸念されていたことではあるが、売買する投資家が増えず、取引が事実上ゼロになっているという。

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 日銀は2015年12月の金融政策決定会合において、年間3兆円のETF購入枠とは別に「設備・人材投資に積極的な企業の株式を組み入れるETF」を追加購入する方針を明らかにした。アベノミクスの趣旨に沿った経営を行う企業の株式を積極的に購入することで、量的緩和策の効果を補完しようという目論見である。

 日銀が購入することが分かっているので、投信各社はこれに飛びつき、新しい投信の組成を行ったが、市場関係者の反応は総じて冷ややかであった。

 賃上げを行えば短期的には企業の収益を低下させてしまう。賃上げが長期的な収益拡大に寄与する銘柄だけを選別するのは極めて困難であり、現実的にはすでに高い業績を上げている企業に絞られることになる。
 だが高収益企業は業績がピーク・アウトしている可能性が高く、こうした企業ばかりを組み入れてしまうと、逆にパフォーマンスが低下することもある。

 実際、上場した賃上げETFのパフォーマンスは日経平均とほぼ同じが場合によっては下回っており、懸念は現実のものとなっている。儲からない商品を積極的に買う投資家はおらず、売買高は減少が続いた。最近では売買高ゼロという日も増えており、上場銘柄としては事実上機能しない状況となっている。

 日銀は、1日あたり12億円、年間で3000億円を上限に購入枠を設定したが、これとは別に、市場への悪影響を排除するため、一般投資家と同じ額までしか購入できないというルールも定めていた。一般投資家による売買がほとんどゼロになってしまったことから、日銀も買い入れができなくなった。

 賃上げETFは、日銀が購入を表明すれば、市場参加者は喜んでその商品を買うだろうという、まさに市場を愚弄した商品の典型といってよい。日銀の市場に対する無知や無理解は今に始まったことではないが、あまりにもスジが悪すぎた。

 日銀はすでに十数兆円のETFを保有しており、賃上げETFについて、限度一杯まで買ったとしても大きな割合にはならない。だが日銀が保有した賃上げETFは少額であっても、市場で自由に売買することは困難になっている。日銀は流動性のない資産をさらに抱え込んでしまったことになる。日本の株式市場はこのようにして蝕まれいくのかもしれない。

 - 経済

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