アルノー家がディオールの株式を追加取得。LVMHの不透明性を払拭
高級ブランド最大手LVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)は2017年4月25日、同社を実質的に支配するアルノー家が、クリスチャン・ディオールを完全子会社にすると発表した。
LVMHは支配構造が複雑で、市場からは資本関係の整理が求められていた。ガバナンスをシンプルにするとともに、ディオール事業をLVMHに集約し機動的な体制にする。
アルノー家は現在、LVMHの株式の約47%(議決権ベースでは過半数)を保有しており、実質的な支配者となっているが、アルノー家が直接保有している株式は約6%と少ない。残りの41%はクリスチャン・ディオールを通じて保有しているが、アルノー家が保有するディオール社のシェアは約74%となっている。
今回は市場から残りの株式を買い付け、アルノー家がディオール社を100%所有するとともに、革製品などを扱う事業子会社クリスチャン・ディオール・クチュールをLVMHの子会社とする。香水などはすでにLVMHの傘下になっていたが、今回の株式移動でディオール事業のすべてがLVMHに集約される。
LVMH傘下のブランドには、それぞれオーナーがいたが、不動産業界出身のアルノーが半ば強引な買収でひとつのグループへの集約化を進めてきた。この過程で各オーナーの利害が複雑に絡み、資本構成が複雑化していた。
今回、資金を投じて資本関係を整理したことで、同グループに対する不透明感はかなり払拭されることになる。長期的に見てメリットは大きいだろう。
アルノー家は今回の株式買収に現金に加えてエルメスの株式も用意している。エルメスの買収はすでに断念しているが、株価が上昇していることをうまく利用し買収資金として活用した格好だ。
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