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かつて導入された買収防衛策が次々と撤回。背景にあるのは株主のモノ言い

 

 かつて上場企業で導入が相次いだ買収防衛策について、撤回するケースが増えてきている。背景にあるのは国内機関投資家のスタンスの変化である。コーポレートガバナンス改革が進んだことで、日本企業の経営も大きく変わりつつある。

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 パナソニックは2017年3月末で買収防衛策を廃止した。同社は2005年、投資家による株式の買い付け行為に対する防衛策を導入。毎年、取締役会においてプランの継続について決議してきた。
 パナソニック以外にも、買収防衛策を撤回する上場企業が増えているが、今年に入って各社が買収防衛策の撤回を進めているのは、機関投資家からの反対の声が大きくなっているからである。

 これまで日本では企業の経営方針に株主が口を出すことはタブーとされてきたが、安倍政権が進めてきたコーポレートガバナンス改革によってこの風潮が大きく変わった。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)など公的な機関投資家は、株主総会において積極的に議決権を行使する方向に舵を切りつつあり、民間の機関投資家もこの動きに追随している。

 買収防衛策は多くの場合、本来の目的ではなく、経営者や従業員の保身のために利用される。日本の場合、株主が経営に口を出すケースが少なかったことから、株主へのリターンは先進各国の中では最低水準にとどまってきた。

 だが一連のガバナンス改革によって機関投資家は企業に対してリターンを強く求めるようになってきた。こうした環境において、経営者や従業員の保身とみなされかねない買収防衛策が撤回されるのは自然な成り行きといってよいだろう。

 株式会社は本来、株主のものであり、株主の意向が反映されることは望ましい姿といえる。しかしながら日本では、ある切実な事情があってこうしたガバナンス改革が進んだという面があることは否定できない。それは年金財政の悪化である。

 公的年金は支払う年金が、徴収する保険料を上回る状況が続いており、このままでは積立金が枯渇する可能性が高い。年金水準を維持するためには、企業からの配当を増やし、運用収益を拡大させる必要がある。

 買収貿易策の存在は、日本型雇用慣行の維持に一定の効果を発揮してきたが、年金の減額という状況を前に、年金か雇用環境という二者択一を迫られたと解釈することもできる。

 これまでモノ言う株主の前に岩盤のように立ちはだかっていた日本型経営の理念が、お金という問題で簡単に崩れてしまったことはちょっとした皮肉といってよいだろう。

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