自動車業界が大変動。ルノー・日産連合が上半期で世界トップに
今年上半期の自動車販売で仏ルノー・日産連合が世界首位となった。自動車市場はそろそろ飽和状態とも言われており、主要4社への集約化が進む可能性が高まってきた。世界的にEV(電気自動車)シフトが急激に進んでおり、EV化の状況次第では、主要4社のシェアも大きく変動することになるかもしれない。
2016年における世界新車販売台数は、1位が独フォルクスワーゲン(VW)で1031万台、2位はトヨタで1017万台、3位はゼネラルモーターズ(GM)で1000万台、4位は仏ルノー・日産連合で996万台だった。トヨタは2008年にGMを抜いて以来、トップを続けてきたが2016年にトップの座をVWに譲った。
ところが今年に入ってランキングが再び大きく変動している。2017年上半期の販売台数で、これまで4位だったルノー・日産連合が一気にトップに躍り出た。
ルノー・日産連合の販売台数は526万8000台と前年同期比で約7%のプラス。一方、VWは515万5600台とほぼ横ばいの状況で、トヨタは512万9000台と前年同期比2.7%のプラスだった。ルノー・日産連合がいきなりトップになったことには少々カラクリがある。傘下の三菱自動車の生産が回復したという特殊要因である。
三菱自動車は燃費不正問題で販売の一時停止に追い込まれましたが、ルノー・日産連合が救済したことで、生産がようやく回復。販売台数の上乗せに貢献した。
これでシェア争いも落ち着くかというとはそうはいかない可能性が高い。自動車業界ではEVシフトが急激に進んでいるからだ。ルノー・日産連合は、大手自動車メーカーの中ではもっともEV(電気自動車)に力を入れており、中国市場向けに低価格なEVを開発している。
一方、トヨタはEV戦略で出遅れている状況だ。もし全世界的なEVシフトがホンモノだった場合には、首位のルノー・日産がさらにシェアを拡大する可能性が出てくる。一方、思ったほどEVシフトが進まなかった場合には、ルノー・日産のトップシェアは瞬間風速となるかもしれない。
いずれにせよ、これからの時代は、自動車がよりコモディティ化することは確実である。中堅以下のメーカーはかなり厳しい経営を余儀なくされるだろう。
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