中国の自動車産業が大躍進。日米水準に近づくのも時間の問題か?
中国の自動車メーカーが急速に技術力を高めている。政府が直接経営に関与する国営メーカーはもちろんのこと、これまで政府からの支援を受けてこなかった純粋な「民族系」メーカーも躍進が著しい。中国の産業インフラが本質的に変化した可能性について認識する必要がありそうだ。
中国の自動車産業は完全に国策となっており、トヨタなど「外資系」企業は自由に生産はできない。外国メーカーが中国国内で自動車を生産する場合、国内メーカーと合弁企業を設立することが義務付けられており、外国からの出資比率は50%以下にする必要がある。
米ゼネラルモーターズ(GM)や独フォルクスワーゲン(VW)など主要メーカーは相次いで中国の政府系自動車メーカーと合弁を組んで中国市場に進出した。日本メーカー各社も政府系企業と合弁を設立している。中国政府の目的は自動車の生産技術を国内に移転することなので、当然、合弁企業を通じて中国側に技術が移転することになる。
高度な生産技術を必要とする自動車産業の場合、そう簡単に技術が移転するわけではない。当初は、中国の思惑通りにはいかなかったが、経験値が増えるにしたがって中国側にも技術の蓄積が進んでいった。ここ2~3年の間に中国メーカーの技術力は飛躍的に高まっており、外資系メーカーに近いレベルの生産技術を身につけるようになっている。
中国の技術力向上がホンモノであることは、独立系メーカーの躍進が著しいことからも推察することができる。長城汽車、吉利汽車、BYDといった完全民営の民族系メーカーは、政府の支援を受けることができなかったため、長年苦戦を強いられてきた。しかし、最近では利用者のニーズを捉えた製品ラインナップで急激に販売台数を伸ばしている。
独立系の企業が高度な技術を蓄積し始めたということは、中国国内の平均的な産業レベルが相当なレベルまで上がってきたことを示唆している。近い将来、中国の自動車産業が日本や米国と肩を並べる可能性について、現実問題として認識する必要がありそうだ。
2016年における中国の自動車販売台数は約2800万台と、米国の1.6倍、日本の5.6倍もの規模がある。中国の自動車産業が日米並みの実力を持った場合、トヨタやGMといった「外資系」が中国市場でシェアを拡大するのはそう容易なことではない。
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