ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

大義なき解散という批判は妥当なのか?首相の解散権に関する考察

 

 衆議院の総選挙が2017年10月10日、公示された。希望の党が誕生したことで、結果的には注目度の高い選挙となったが、安倍首相が解散を決断した時点では大きな争点もなく、一部からは「大義がない」との批判も寄せられた。果たして首相の解散権はどこまで認められるものなのだろうか。

kaisan

  内閣が衆議院を解散する権利は憲法に定められており(69条および7条)、これは議院内閣制の根幹をなす制度のひとつとなっている。厳密には、解散権は首相ではなく内閣にあるが、内閣の意思決定権は事実上、首相が握っていることを考えると、解散権も同じく首相に帰属するというのが自然な解釈となる。

 永田町における慣習という点においても、解散権は首相の専権事項というのが一般的な理解であり、他の政治家は関与することができないとされている。まさに解散権は首相にのみが持つ「伝家の宝刀」というわけだ。
 解散権が首相にだけ帰属するのであれば、その理由や大義の有無について周囲が批判してもあまり意味はないことになる。

 ただ、首相は好き勝手に解散してよいのかという必ずしもそうはならないようだ。もともと日本国憲法では内閣不信任案を発端とした解散(69条)しか想定しておらず、7条による解散は事後に慣習的に出来上がったものである。

 最高裁では首相の自由な解散権の行使に対して、統治行為論の延長線上で明確な判断を避けてきた。つまり解散は高度に政治的な問題であり、簡単に司法が口を挟める問題ではないということである。

 だが、高度に政治的な問題であるならば、首相はその権利を安易に行使してはならないというのもまた事実である。
 今回の解散は、結果的には高度に政治的なものとなったが、少なくとも安倍氏が解散を決断した段階では、このような状況は想定されていなかった。解散が、政界再編の引き金を引くとは誰も思っていなかったし、憲法改正の議論が加速することも想定されていなかったはずである。

 安倍氏の決断そのものについていえば、首相の大権を行使するのにふさわしい状況でなかったというのが正直なところだろう。だが、その行為は結果として高度に政治的な状況を作り出した。やはり政治というのは一筋縄ではいかないようである。

 - 政治 , , ,

  関連記事

kagoike
「森友」疑惑に関して国策捜査発動との観測。日本の議会制民主主義にとって正念場

 学校法人「森友学園」に対する国有地払い下げ問題をめぐり、国会で証人喚問を受けた …

sugaku
文系入試にも数学必須に?だが理系冷遇の風潮を改善しない限りモノづくりは復活しない

 自民党の教育再生実行本部が、文系を含むすべての大学入試で理数科目を必須とするこ …

kuroda
黒田日銀総裁が正式決定。これまで白川路線に賛同していた政策委員は意見を変える?

 参議院は3月15日午前の本会議で、日銀の正副総裁人事を可決した。総裁には黒田東 …

uiguru
新疆ウイグル自治区で警官とウイグル族住民が衝突。中国政府はテロと説明

 中国国営新華社通信は、中国北西部の新疆(しんきょう)ウイグル自治区で4月23日 …

ouyou
総勢180名の財界訪中団が汪洋副首相と会談。だがトップ2との会談は実現せず

 安倍政権発足後、最大規模となる財界訪中団は11月19日、北京市内において汪洋副 …

shukinpeibaeikyu
中台首脳が66年ぶりの歴史的会談へ。だが台湾総統選挙には逆効果?

 中国の習近平国家主席と台湾の馬英九総統が2015年11月7日、シンガポールで会 …

contena
韓国大統領選はFTAをめぐって政策が真っ二つ。日本のTPP論争にも影響か?

 12月に行われる韓国大統領選挙において、2大候補者の経済政策が真っ二つに割れて …

jfk
ケネディ元大統領の暗殺から50年。米国は人種問題を本当に克服したか?

 ケネディ元大統領が暗殺されてから11月22日で50年となる。米国ではオバマ大統 …

shukimpeigermany
中国が安心して「日本はドイツに見習え」と主張できるようになった理由

 中国の習近平国家主席が、ドイツ訪問をきっかけに「日本はドイツを見習え」という趣 …

asean
ASEAN首脳会議。議長国カンボジアが中国に遠慮し領有権問題を文面から勝手に削除

 カンボジアのプノンペンで開かれている東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議に …