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赤プリに続いて旧長銀ビルも解体。不況の最中、新しいビルを次々と壊す異様な光景

 

 バブル崩壊の象徴であった旧長銀ビルが建て替えられることになった。日本政策投資銀行と不動産ファンド運営のケネディクス、東急不動産は6日、米モルガン・スタンレー系の不動産ファンドから旧日本長期信用銀行本店ビルを取得し、賃貸用のオフィスビルに建て替えると発表した。

 ファンドからは500億円で取得し、あたらに250億円を追加支出して、新しいビルを建設する。新しいビルは地下2階、地上20階、延床面積は約5万7500平方メートル。2017年に竣工する予定だという。

 旧長銀ビルは同行が破綻する直前に、巨額の資金を投じて建設したもの(写真右)。竣工は93年なので19年しか経っていない。まだピカピカの高層ビルを新たに建て替えるというプランに一部からは疑問の声も出ている。
 銀行の本店用に作られたビルは、間取りなどが特殊で一般的な賃貸オフィスビルには転用しにくいという事情もある。だがわざわざ新しいビルを建て替えるというプランが出てくる背景には、不動産くらいしか資金需要がないという日本経済の悲しい現実がある。

 日銀は次々と緩和策を実行し、資金を市場にジャブジャブと投じているが、そのマネーは企業の設備投資には回らない。硬直化し閉塞感漂う日本経済を前に企業が積極的に投資をしないからである。
 一方不動産は他の事業に比べればリスクが少ない。しかも都心に新しいビルを建設すれば、とりあえず築年の古いビルから顧客を奪うことができる。要するに安易で手っ取り早いビジネスなのだ。銀行はこれまで国債ばかり購入していたが、保有残高が急増し、これ以上国債を買えないレベルになりつつある。その代わりになるのが不動産というわけである。
 当然だが、新しいビルを作ったところで日本経済が活性化するわけではない。一部では不動産市場の回復を期待する声もあるが、マクロ的に見ればあまり影響はないだろう。

 優良な不動産があっけなく立て替えられるという事例はほかにもある。赤坂プリンスホテルは西部グループの経営体制の刷新に合わせ、ホテルとしての営業を終了、建物は取り壊され建て替えが進められている(写真左は取り壊し前の赤坂プリンスホテル新館)。
 だが同ホテル新館ビルの竣工は1983年であり高層ビルとしてはまだ新しい。しかも設計者は日本を代表する建築家である故丹下健三氏であり、文化財的価値の高い建造物でもあった(丹下氏の建築に対する好き嫌いはともかくとして)。
 同ビルはもともとオフィスビルへの転用も考慮されていたといわれており、安易な取り壊しに対する疑問の声も上がったが、大きな動きにはならなかった。

 欧州や米国では築100年のビルが当たり前のように利用されている。一般住宅も同様であり、米国では住宅購入において築年数を気にする人などほとんどいない。だが日本の建造物の寿命は極めて短く、作っては壊し、作っては壊しの連続である。いまだにハコモノに固執する貧しい途上国の精神構造から脱却できていない。
 しかもビルの建て替えには莫大な量の資源が必要であり、資源の効率的な利用という観点からも時代に逆行している。エコバックなどの運動も結構だが、こういったビルの建て替えを少し抑制するだけで、1億人分のビニール袋など一瞬で節約できてしまうだろう。「モッタイナイ」の向く方向が確実に間違っているのだ。

 不動産にしか資金が回らず、安易な建て替えが行われ、周辺の古いビルには空室ばかりが目立つ。都心には同じような真新しいビルが並ぶだけという空虚な光景は、まさに現代日本の象徴なのかもしれない。

 - 社会, 経済

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