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アップルがパソコンの一部の国内生産に回帰。だが鴻海への丸投げは変わらず

 

 米アップルが自社製品の一部を米国での生産に切り替える。同社のクックCEOが6日、米メディアのインタビュー応じ、国内生産の方針を明らかにした。

 それによると同社は2013年以降、パソコン製品「マック」の一部機種の生産を中国から米国内に移管する。これにあわせて米国内に1億ドル(約82億円)の投資も実行する。
 同社は、iPhoneやiPadなど主要製品の多くを中国で製造している。だが中国の人件費が急上昇し、下請け工場における労働者の暴動が発生するなどトラブルが相次いでいる。また米国内において産業空洞化に対する批判も強いことから、一部を国内生産に切り替える決断を行ったものとみられる。
 今回のアップルの決定をきっかけに、低賃金国から先進国に生産を回帰する動きが本格化するとの見方もあるが、実際の状況はそれほど単純ではない。

 同社の米国内への生産移管はパソコン製品の一部にとどまり、スマートフォンやタブレットPCの生産は引き続き中国で実施する。また生産は米国に戻しても、 アップル自身は生産を行わない可能性が高い。中国での生産を受託している鴻海(ホンハイ)精密工業が米国に進出。米国内に生産拠点を構築し、そこに生産を委託するものとみられる。
 もしそのスキームが事実だとすると、米国内への生産回帰というよりも、鴻海の米国本格進出というニュアンスが強くなる。

 そもそも、米国のメーカーはすべての製品を中国など低賃金国で生産しているというイメージがあるが、現実はそうではない。
 鴻海は現在世界1位の生産請負企業であり、その製造拠点の多くは中国にある。だが、世界第2位の生産請負企業であるFlextronics社は多くの生産拠点を米国に維持している。同社はもともと米国の生産請負会社であるSolectron社をシンガポールの会社が買収してできた会社であり、NASDAQに上場している。同社はマイクロソフトのゲーム機Xboxやモトローラ社の携帯電話などの製造を受託している。
 鴻海がアップルとの契約によって米国に進出すれば、同社としては初の本格的な米国生産となる。だが以前から米国内で生産されている機器も実は少なくないのである。

 米国も南部など地域を選べば人件費をかなり安く抑えることができる。また米国内であれば、輸送コストも少なく済み、暴動や政変などのリスクも回避することができる。企業は、単純に米国か中国かという選択肢で生産拠点を判断しているわけではない。その時点において総合的にベストな地域や体制で生産を行うだけのことである。

 安易な空洞化論や国内生産回帰論は意味をなさない。企業活動の本質を見誤るだけである。

 - 社会, 経済

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