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不況なのに家賃高騰?経済が低迷しつつある韓国で奇妙な現象が発生する理由とは?

 

 経済成長が鈍化しているにも関わらず、家賃が急騰するという奇妙が現象が韓国で起こっている。

 韓国はサムスンなど特定の大企業が経済を牽引する形で高い経済成長を実現してきた。だがウォン安が逆転し始めたことや中国向けの輸出が減少したことなどにより、足元の景気には黄色信号が点灯し始めている。本来は景気が低迷すればデフレとなり、物価は安くなるはずである。だが韓国では住宅の賃料が高騰し、庶民の生活を圧迫、大きな社会問題になっているのだ。

 なぜそのようなことが起きるのかというと、韓国独特の不動産賃貸方式である「伝貰」というシステムが機能不全を起こし始めているから。

 不動産を借りる場合、一定の敷金を支払った上で、月々の家賃を家主に支払う方式が一般的だ。これは日本でも米国でも基本的な仕組みはほぼ同じである。だが韓国ではこの方式は一般的ではない。家の借主は、大家に対して不動産価格の半額程度の金額を一括で支払い、その代わり入居中は家賃を支払わず、退去時に全額を返却してもらうという「伝貰」という方式が広く普及している。

 例えば、購入すれば1000万円になるアパートに入居する場合には、毎月の家賃を支払う代わりに500万円程度の資金をアパートを借りる側が用意する。そして退去時に全額を返金してもらう。日本で同じような物件を借りる場合には、毎月の3万~5万円程度の家賃を支払うのが一般的だ。
 これでは貸主がまったく儲からないように見えるがそうではない。貸主は借主から得たお金を別の商品で運用したり、次の物件購入に回すことで利益を得てきたのである。日本と同様、韓国にも不動産神話というものがあり、不動産価格は値上がりを続けてきた。家賃を取らなくても、値上がり分で回収することができたのである。
 こうした一風変わったシステムが普及する背景には、韓国における国内経済の貧弱さがある。韓国経済には余剰資金が少なく、不動産に対する金融システムが整備されていない。不動産の所有者にとってはこのような慣習がないと、次の不動産を買う資金を調達することができないのである(日本にも終戦直後の貧しい時期には似たようなシステムが存在した)。
 一方、住宅を借りる側にもメリットがあった。一括の資金さえ用意できれば事実上タダで家を借りることができる(韓国はインフレが激しかったため、インフレ分が事実上の家賃となる)。低所得者が多い韓国の実情を考えると、合理的な選択であった。

 だが最近の景気低迷と低金利でこのシステムが機能しなくなっている。大家の側が、資金運用や次の不動産購入で稼ぐことができず、前払いの金額を軒並み値上げしているのである。伝貰の相場は3割~4割も上昇したといわれており、この金額を用意できず、家を借りられない人も出てきている。
 経済的な面に加えて、社会的な側面から問題を指摘する専門家もいる。家を借りるためにはまとまったお金が必要なわけだが、低所得者にその能力はない。どうしても親類や知人など俗人的な関係を頼りに資金を調達することになるため、閉鎖的なムラ社会から脱却できないのである。ヤミ金などの非合法金融が跋扈する土壌ともなっている。

 一部の財閥企業の躍進とは裏腹に、韓国の庶民はかなりの生活苦を強いられている。現在はだいぶ改善されてきているものの、日本においても不透明な不動産取引制度や大企業の社員ばかりを優遇する社会システムなど、韓国社会との類似性は数多く見られる。日本には過去の貿易黒字を背景にした豊富な資本蓄積があり、お金で問題が解決できているので、韓国のような状況に陥っていないだけだ。

 韓国はもちろんのこと、日本においても、欧州や米国のようなレベルで個人の権利が保護されるまでには、まだかなりの時間がかかるのかもしれない。

 - 政治, 社会, 経済

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