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米議会が尖閣諸島を安保対象とする法案を可決。だが日本にとっては大したメリットはない

 

 米上院は4日、本会議において、2013年度(2012年10月~13年9月)国防権限法を可決した。同法には、沖縄県・尖閣諸島を日米安全保障条約の適用対象とすることを明記した条項が盛り込まれており、米国側は尖閣諸島に関する見解をあらためて表明したことになる。

 日本側にとっては、米国が尖閣諸島問題について一定の支持を表明したことになり、とりあえずは歓迎すべきことといえる。一方の中国側は「米国は、領土紛争に介入しないという発言を守り、自己矛盾的な誤ったシグナルを送らないことを希望する」(中国外交部の洪磊報道官)として同法案の可決に反発している。
 だが同法案が可決したことで、尖閣諸島の領有権問題は軍事力の行使を伴わない政治レベルにおいては、ほぼ着地点が見えてしまった格好となったのも事実だ。

 米議会が可決した国防授権法では、尖閣諸島問題について米国政府が表明してきた見解を完全に踏襲しており、目新しい点はない。つまり、今回の議決は、政府だけでなく議会においても、尖閣問題に対する米国のスタンスが明確になったことを意味している(米国では戦争をする最終的な権利は議会にあると解釈されており、法案に盛り込まれることは極めて重要)。
 尖閣諸島問題における米国の従来からのスタンスとは「米国は尖閣諸島における日本の行政権を認め、日米安保の適用範囲とするが、領有権に関しては立場を明らかにしない」というものである。

 ニクソン政権当時のロジャース国務長官は、「沖縄返還協定が尖閣諸島の領有権にどのような影響を与えるか」という議会からの質問に対し、 「島の法的地位には全く影響を与えない」(this treaty does not affect the legal status of those islands at all)と答弁しており、日本の領有権を担保していない。
 一方でロジャース国務長官は、沖縄返還協定に尖閣諸島が含まれることも明言 しており(the terms and conditions for the reversion of the Ryukyu Islands, including the Senkakus)、これによって日本が行政権を保有することも明確にしている。
 議会はこの答弁をもとに尖閣諸島問題について過去2回にわたって報告書を作成しており、今回の法案にも同様の内容が盛り込まれた。要するに尖閣諸島に対する日本の行政権については認めるが、根本的な所有権については言及しないというわけである。

 日本はこれまで「領土問題は存在しない」との立場を貫いてきたが、中国側の強硬姿勢によって、事実上領土問題の存在を認めざるを得ない状況に追い込まれている。米国からのメッセージは日本の行政権の保有までであり、領有権について米国から援護射撃が得られることはない。もし米側の姿勢が日中両国の落としどころになるとすると、日本は「領土問題が存在しない」という立場から「領土問題はあるが、とりあえず実効支配している」というレベルに後退しただけということになる。

 一見歓迎すべき事態に思える米国の法案可決だが、「領土問題が存在する」という外堀は完全に埋められたといってよい。

 - 政治

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