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実は厄介者?世界の9割を独占していた中国がレアアース輸入に転換した背景とは?

 

 世界シェアの90%を握るといわれている中国のレアアース生産が曲がり角に来ている。中国の独占を望まない先進各国が世界各地でレアアース鉱山の開発を進めていることと、中国自身がレアアース輸入国への転換を図っていることがその背景にある。

 中国政府は2010年にレアアースの輸出規制を発表し、世界中がパニックとなった。ハイテク機器の製造にはレアアースが欠かせない存在だからである。尖閣諸島問題が発生した際も中国は日本に対してレアアースの輸出規制をちらつかせている。
 米国や日本など先進工業国はこの事態をうけて、世界各地のレアアース鉱山の開発を進めている。中国はレアアースの生産では圧倒的なシェアを占めているが、レアアースは中国だけに埋蔵されているわけではない。オーストラリアや北米、アフリカ、インドにも埋蔵されており、コスト面の折り合いさえつけば採掘が可能だ。実際、オーストラリア、カナダ、米国(アラスカ)、などでは新しい鉱山開発が進められている。

 だがそうしているうちに、中国自身がレアアース政策の方向転換を始めた。これまで輸出していたレアアースの多くを国内消費に回しているのである。10年前には生産量の10%しかなかった国内消費が現在では70%近くまで上昇している。それだけではない。中国はレアアースの本格的な輸入国になることとも想定しており、世界のレアアース鉱山が中国向けの輸出を検討しているというのだ。

 レアアースは非常に貴重な資源ではあるものの、だからといって産業としてそれほど旨みのあるものではない。低い労働コストという条件があってはじめて成立するものである。これまで中国は圧倒的な人件費の安さを背景にレアアースで高いシェアを確保してきたが、人件費が高騰した今となっては他国の生産と比べて特に競争力があるわけではなくなった。
 しかもレアアース開発には放射能汚染という非常にやっかいな問題がつきまとう。中国はこれまでレアアース精製の過程で排出される放射性物質を実質的にタレ流ししてきたが、中国社会の成熟化とともに、公害を無視できないようになってきたのである。
 オーストラリアのレアアース生産も、採掘はオーストラリアで行っているが、精製と廃棄物の処理はマレーシアに押し付けているのだ(現地では反対運動が起きている)。実はレアアースは厄介者であり、中国としては各地から輸入した方が得策という判断に傾いている。

 レアアースの確保が安全保障上重要という話は一面では真実だが、一面では正しくない。米国の軍需産業にとってはコストは大した問題ではなく、いかなる環境でも調達できることが重要となる。このため中国に大きく依存する体制は何としても避ける必要がある。
 だが民間にとって重要なのはコストである。石油も含めて、資源は地球上にいくらでも存在している。だが適性なコストで採掘できる資源ということになると限られてくる。逆にいうと価格が上昇すれば、これまで採算の取れなかった地域で採掘ができるようになるため、資源の枯渇そのものはほとんどの場合、心配する必要はなくなる。
 米国では原油価格の上昇をきっかけにシェールオイルの採掘が進み、近い将来、すべての石油を自給できる見通しとなっている(以前は本気で石油が枯渇するという話が信じられていた)。

 レアアース危機の問題もまさにこの典型といえる。レアアースの価格上昇によって、これから世界各地で採掘が行われ中国の独占は崩れていくだろう。むしろ放射能汚染という環境問題の方が、政治的に重要なカードになってくる可能性すらあるのだ。

 - 政治, 経済

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