景気の悪化が続く欧州で、なぜか株価が絶好調。理由は「危機疲れ」?
債務危機が続いているはずの欧州で株価が好調だ。ここ半年でドイツの株価は25%近く上昇、フランスも20%近く上昇した。債務危機の震源地であるスペインやギリシャの株価も軒並み上昇している。逆に米国や日本は10%程度の上昇にとどまっており、違いが際立っている。
欧州では失業率の増加が止まらず、フランスではとうとう10%を超えた。スペインでは25%という過去最悪の数値を更新、若年層にいたっては55%という驚異的な数字を記録している。公務員比率の高い同国では、若年層では公務員以外は全員失業しているような感覚だ。
欧州経済の機関車であるドイツ経済にも減速傾向が見え始めており、欧州問題は解決に向かって前進しているとは言い難い状況だ。
それにも関わらず欧州の株価が堅調なのは「危機疲れ」(市場関係者)があるという。一連の欧州危機はユーロという構造的な問題が原因となっており、根本的には解決できないという認識が定着しつつある。経済が脆弱なギリシャやスペインと強国であるドイツがそもそも同じ条件で金融取引ができるわけがない。この矛盾を解決するには、欧州の完全統合が必要となるが、それまでには多大な時間と手間が必要となる。
市場では、EUとユーロという枠組みを壊さないという合意さえ出来ていれば、時間をかけて解決していけばよいという雰囲気になってきている。今現在はスペインやギリシャが危機的状況であっても、欧州全体で見て大きなマイナスになっていなければよしとするという考え方だ。
スペインやギリシャに対する救済に反対する意見が根強いドイツだが、ユーロ推進を強力に推し進めているメルケル首相への信任は厚く、ユーロに対して背を向ける意見はやはり少数派といってよい。スペインではカタルーニャ州が独立の動きをみせ、連邦政府崩壊かと騒がれたが、結局州議会選挙では独立派が議席を減らし、独立を問う住民投票の実施も微妙な情勢となってきた。
しばらくの間、長い小康状態が続く可能性が高くなってきた。
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