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これぞジャパン・パッシング!ANAが新北米路線で打ち出した驚異の運賃設定

 

 日本のエアラインが相次いで北米のニッチ路線に進出している。日本航空は12月2日、成田―サンディエゴ便の運行を開始した。また全日空も2013年1月11日、成田-サンノゼ便の運行を開始する予定だ。両社の新しい北米路線への進出は、ガラパゴス化した日本の航空業界が置かれている状況を色濃く反映したものとなっている。

 JALが進出するカリフォルニア州サンディエゴ市はロサンゼルスから車で2時間程度の距離にある街。日本で言えば湘南のような地域であり、観光地であるとともに、教育機関や研究機関も多く。またメキシコへの玄関口として知られており、メキシコ側には大手メーカーの工場も多く建設されている。
 またサンノゼはシリコンバレーの本拠地の一つ。シリコンバレーは縦に長く、シリコンバレーの南部地域はサンフランシスコよりサンノゼの方が便利だ。

 両社が巨大都市ではない北米都市の路線に進出しているのは、日本からの旅客需要を取り込むためではない。アジアと米国を往復する旅客を確保することが目的である。
 日本企業の弱体化が進み、北米と日本を往復するビジネスマンの数は近年激減している。一方、アジアと北米を往復するビジネスマンは年々増加しており、米系航空会社の便で成田に到着する乗客のほとんどは成田で入国せず、そのまま中国などアジアに乗り継いでいく。
 これまでJALやANAは日本往復の乗客(主に日本人)に焦点を当てていたため、アジアへの乗り継ぎには不便であった。サンノゼ便やサンディエゴ便はこの点を考慮し、アジアへの乗り継ぎが便利になるよう接続便を調整している。

 さらに驚くのが価格設定である。ANAの成田-サンノゼ便(日本発)の往復運賃は種類にもよるが30万円台後半が中心。だがこれが米国発になると22万円前後と安くなり、さらに成田で乗り継いで上海に向かえば15万円前後まで安くなる。成田で降りるよりも中国に乗り継ぐ方が、距離が遠いにも関わらず、運賃が安くなるように設定されているのだ。
 「日本には来なくていいので、どうぞ中国に行ってください」「日本人の顧客からは高く徴収しますよ」という日本人にとっては一種屈辱的な価格設定だが、「現実を理解したプライシング」(航空ジャーナリスト)と評価する声もある。

 もっとも両社が手放しで喜べる状況かというそうではない。こういったニッチ路線は収益の屋台骨にはならないからだ。
 両路線とも使用する機材はB787型で座席数は160席程度と少ない。だがアジアの主要都市と北米主要都市を結ぶ路線は、米系やアジア系の航空会社で占拠されている。JALやANAにとってはこれらニッチな路線しか空いているところはなく、787型という小型で燃費のよい機材を使うことでようやく採算が取れるというのが実情だ。

 JALやANAはもはやアジアの片隅にある地方ローカル航空会社に成り下がっている。その意味で、ナショナルフラッグとしてのプライドを捨て、米系やアジア系のエアラインが見向きもしない小規模路線に進出した両社の決断は正しい。だが唯一問題なのは、両社の運行コストだけが地域ローカル航空会社の水準になっていないことだ。
 日本のエアラインの運行コストは、低コストのアジア系エアラインはおろか、ユナイテッド航空やデルタ航空といった米系のエアラインよりもはるかに高い。日本国内だけでやっていくのであれば、パイロットや事務系社員のバカ高い給料も許容されるのかもしれないが、アジアや米国で勝負するのであれば、現在の給与水準ではとても戦えないだろう(日本のパイロットは2000万円を超える年収だが、米系エアラインでは600万円台の人も登場している)。

 本当の意味でのグローバル展開をスタートさせたついでに、両社には、社員の給料もぜひグローバル化してほしいものだ。

 - 経済

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