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日銀法改正で安倍総裁に牽制球。「次」を狙う石破幹事長のしたたかな戦略とは?

 

 自民党の石破茂幹事長は17日、テレビ東京の報道番組に出演し、日銀法改正について「言うことを聞かないと総裁を代えるというのは行き過ぎ。そこまで考えている人はいない」と述べ、日銀総裁の解任権の付与について否定的な見解を示した。また日銀法の改正そのものについても 「必ずしも賛成しない」と述べ、改正を視野に入れる安倍総裁との方向性の違いを明確にした。

 政策オタクで頑固なイメージの強い石破氏だが、やみくもに自説を述べ、安倍氏の路線に反対しているわけではない。石破氏の発言は「次」を見据えた戦略的なものである可能性が高い。
 石破氏は、今回成立が決まった安倍政権の極めて重要なキーマンのひとりである。幹事長として今回の選挙を指揮した石破氏は、政権交代に関する最大の功労者のひとりといってよい。当然に幹事長の続投が期待されることになる。
 安倍氏周辺は当初、石破氏を主要閣僚で処遇する方向で人事案を検討していた。石破氏が幹事長の椅子に座っていると、自分達の思うように政権運営が出来ないからだ。主要閣僚にしてしまえば、石破氏はその仕事で手一杯になり、党の政策全体に口を出すことが難しくなる。だが安倍氏は結局、石破氏に幹事長留任を打診した。

 かつての石破氏ならば喜んで閣僚ポストを受けた可能性が高い。だが今の石破氏は昔とは違う。石破氏には「次」が見え始めており、そのためには、党内の支持基盤をしっかりと固めておく必要がある。政策すべてに関与できる幹事長のポストは何としても維持したかったはずだ。

 安倍氏は年明け早々にも訪米し、オバマ大統領と会談する予定である。安倍氏は中国に対する強硬姿勢を打ち出している手前、米国に協力を依頼せざるを得ない。一方米国は、日本に対する支援と引き換えにTPPへの参加を打診してくる可能性が高く、その時には、農業を中心とした国内産業の保護が重要な政治課題に浮上してくるはずだ。
 ここで国内産業に対するケアが十分でなかった場合、せっかく基盤が固まりつつあった党地方組織の結束力が崩れてきてしまう。石破氏がこの局面を幹事長としてうまくまとめることができれば、確実に「次」の立場が舞い込んでくるだろう。石破氏の狙いはまさにそこにある。

 日銀法改正に対する石破氏の慎重論も同じ戦略の延長線上にある。日銀法の改正に反対する金融関係者に対して「良識」のあるところをアピールし、「次」への側面支援を引き出す狙いだ。

 その意味で、安倍総裁と石破幹事長の路線対立は今後もしばしば表面化する可能性が高い。今後の石破氏の発言は、「次」を狙うという「文脈」でとらえることによって、真意を明確に理解ることができるはずだ。
 だが石破氏が描く政治手法は、旧来の自民党の典型的なスタイル。石破氏が幹事長に留任したことで、政権運営に対する安心感は出てきたが、ラジカルな改革という意味では大きく後退することになる。時に前後左右を考えない発言が飛び出す安倍総裁の「やんちゃ」さに期待した有権者にとっては、少々肩透かしの内閣となるかもしれない。

 - 政治

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