ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

米軍がステルス戦闘機F-35を岩国基地に配備。その背後にある米国の事情とは?

 

 パネッタ米国防長官は18日、米軍のステルス戦闘機F35を2017年に米軍岩国基地に配備する考えを明らかにした。米国外への配備は初めてのケースとなる。

 パネッタ長官が配備計画を明らかにしたのは、ワシントンのナショナルプレスクラブで開催された講演会の席上。攻防総省の正式な発表ではなかったため、事前に日本側に連絡はなかった模様。中国機の領空侵犯や北朝鮮の弾道ミサイル発射などをうけて、あえてこの時期に配備を言及したものと思われる。

 岩国基地に配備されるのは、海兵隊仕様のF-35Bと呼ばれるタイプ(短距離離着陸を想定している)。日本の航空自衛隊が次期主力戦闘機として配備するF-35は空軍仕様のものであり、岩国基地に配備される機体とは別のもの。日本のマスコミでは、F-35の岩国配備によって、日米の一体運用が強まるという単純な論調が主流だが、事情はもう少し複雑だ。

 ひとくちに在日米軍といっても、その目的によって部隊の性格は様々だ。マスコミ報道ではこれらを十把一絡げに取り扱うので、実態がかえって見えにくくなっている。大きく分けて日本には、海軍、空軍、海兵隊という3つの軍隊が駐留している。

 海軍は第7艦隊が横須賀を母港に展開している。原子力空母ジョージワシントンと指揮艦ブルーリッジを中心に9隻の巡洋艦や駆逐艦を擁しており、世界屈指の攻撃能力を持った艦隊となっている。第7艦隊の役目は東シナ海における米国と日本の制海権を維持するためのもので、この部分については日本の海上自衛隊と完全に一体運用されている。太平洋地域において日本や米国の船が我が物顔で走り回り、中東から自由に石油を輸入できるのは、第7艦隊が横須賀に存在しているからである。
 空軍は沖縄の嘉手納基地や青森県の三沢基地などに戦闘機を配備し、日本領空の制空権を確保する目的で活動している。日本領空の制空権を米軍が確保するのは、在日米軍基地への攻撃を防ぐことが目的である。
 海兵隊は、主に沖縄に展開しており、上陸作戦を実行する部隊である。海兵隊の目的はズバリ、朝鮮半島や中国本土に直接地上部隊を派遣することにある。海兵隊は日本の本土防衛とは直接関係なく、米軍の世界戦略のためのみに存在している。

 海兵隊は沖縄の普天間基地を拠点に、佐世保基地から派遣された海軍の強襲揚陸艦に乗って紛争地域に移動する。紛争地域では強襲揚陸艦に搭載されたヘリコプターや、最近配備が強行されたオスプレイを使って地上部隊を展開する。地上部隊の活動を支援するために、空からも攻撃する必要があり、今回岩国に配備されるF-35Bが活用される予定だ。
 海兵隊の基地や機材は、米国の世界的な軍事戦略と直結するので、米国にとっては極めて重要な存在である。オスプレイ配備や辺野古への基地移転において米側に譲歩する気がないのはある意味で当然なのである。

 F-35Bの配備とオスプレイの配備はセットで考えるべきものである。両者が日本に配備されることによって、アジア地域の海兵隊の機動力は大幅に向上することになる。米側は大量の軍隊を他国に駐留させ続ける従来の戦略の見直しを図っており、機動力の高い機材の配備はこれを実現するための手段である(コストがかかり過ぎることと、他国の政治に影響されないようにするため)。
 つまり長い目で見れば、オスプレイやF-35Bの配備は、日米安保を事実上有名無実化し、日本から駐留米軍が出て行くためのステップなのである。これは日本の基地負担が減るとみなすこともできるし、米国が日本を見捨てるとみなすこともできる。どちらとみなすかは日本人次第である。少なくとも、北朝鮮や中国に対する抑止力が向上するといった単純な話でないことだけは確かだ。

 - 政治

  関連記事

shukinpei
中国に異変?新聞検閲問題が北京にも波及し、香港では行政長官弾劾の動き

 中国共産党による独裁体制を批判する動きが、国内でじわじわと広がってきている。新 …

blackbyte
ブラックバイトに対抗する労働組合が結成。効果はどの程度あるのか?

 長時間労働の強制や賃金未払いなど、学生アルバイトに対する不当な扱いに対抗する労 …

no image
ギリシャで脱税リストを暴露したジャーナリストが逮捕。ギリシャと日本は同じレベル

 ギリシャ警察は28日、脱税者の名簿をスクープしたジャーナリスト、コスタス・バク …

wine02
日本産ワインのブランド力強化法案は効果を発揮するのか?

 国産ワインのブランド力を強化するため、自民党が「ワイン法案」について検討してい …

kougaibukken
進む不動産市場の二極分化。郊外は高級物件でも売りにくくなっている

 不動産市場の二極分化が、ゆっくりとしたペースではあるが、着実に進行している。首 …

myanmer02
民主化に逆行?ミャンマーで仏教徒女性の異教徒との結婚を制限する法案が波紋を呼ぶ

 民主化と経済開放が続くミャンマーで、議会に提出が予定されているある法案をめぐっ …

zenjindai2014
中国で全人代が開催。中国が抱える問題はバブル後の日本にさらに酷似

 中国における今後1年間の重要政策を議論する全人代(全国人民代表大会)が2014 …

monju
政府が「もんじゅ」見直し検討。核燃料サイクルに関する国民的議論が必要な時期

 日本の核燃料サイクルの中核となる高速増殖炉「もんじゅ」について、政府が計画の見 …

sendaisaiban
大川小学校の津波訴訟は、日本人に自分のアタマで考えることの重要性を強く訴えかけている

 東日本大震災の津波で犠牲になった宮城県石巻市大川小学校の児童の遺族が市と宮城県 …

sinjuku
実質賃金は下がっているのに、社会的満足度が過去最高の理由

 内閣府は2017年4月3日、「社会意識に関する世論調査」の結果を発表した。現在 …