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今年の海外旅行が過去最高を記録。生活実感と乖離した報道のウラにある真実とは?

 

 旅行代理店のJTBによると2012年の日本人出国者数が最高記録を更新するという。10月までの出国者数は1562万人で、前年同期比で11.3%増加した。最終的には1850万人程度まで増加する見込み。過去最高を記録した2000年の1781万人を超えることになる。また今年の年末年始の旅行人数は65.7万人で過去2番目の水準となる見通 しだ。

 毎年年末年始になると、海外旅行に出かける人が増加しているというニュースが流される。今回のJTBの発表に対しても「海外旅行が過去最高に!」との見出しが並ぶ。
 だが日本は史上最悪に近い不景気の真っ最中。生活保護の申請者が軒並み過去最高を記録する状況を考えると、海外旅行が活況といわれても、まったく生活実感と結びつかない。

 それもそのはずである。これらの報道はみな焦点がピンボケだからである(それか旅行代理店に遠慮していいニュアンスの報道しかしていない)。
 ここ10年の日本における旅行人数はほぼ毎年着実に減少しており、10年で1割近くも減った(旅行客が1割減るというのは経済学的には大変な事態である)。また金額も毎年減額が続いている。日本の経済状態を如実に反映し、旅行マーケットは縮小の一途を辿っているのだ。
 海外旅行は何とか人数だけは横ばいとなっているが、金額はやはり減る一方である。今年の海外旅行の人数が増加したのは、低価格競争の末、人数だけは何とかプラスになっただけにすぎない(金額は当然マイナス)。

 それでも海外旅行だけが何とか人数で横ばいを保っているのは、多額の年金をもらえるシニア層がまだ派手に消費をしているからである。60代の平均観光旅行回数は2.03回と他のどの年齢層よりも高い。同様に旅行回数が多いのは20代の女性と50代の女性である。要するに女性とシニア層のみでなんとか市場を確保しているというのが実態といえる。

 シニア層と女性に旅行客が偏るのは日本の社会構造と深い関連性がある。シニア層に偏るのは当然のことだが、若年層との所得格差が大きく影響している。現在の若年層には何回も旅行に行く余裕はない。また女性に偏っているのは日本は女性の社会進出が遅れているからである。要するに男は会社で稼いで女は消費するという構図である。
 だがこれは将来に暗い影を投げかける。日本の経済力の低下は著しく、今後は男性の所得で専業主婦を支えるという構図は成立しない。現在のシニア層がいなくなる10年後には、男性の所得で旅行ができる女性の数も激減しているだろう。このままではシニア層と女性層の両方を失うというダブルパンチにもなりかねないのだ。

 これは単に旅行業界だけの問題ではない。あらゆる業界に共通するテーマである。高齢者に著しく偏った富の分配や専業主婦の存在を前提にした就労形態などを見直さないと、社会の変化に制度が追いつかず、結果として多くのマーケットを失うという結果になってしまう。少なくとも海外旅行が増加していると喜んでいる場合でないことだけは確かである。

 - 社会, 経済

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