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欧州が緊縮策から方向転換?世界はリーマンショック以前に逆戻り

 

 これまで緊縮財政一辺倒だった欧州委員会(EU)が方向転換を図っている。スペイン、フランスなど財政赤字を抱える一部のユーロ圏諸国に対して、赤字削減目標の変更を提案する方針であることが明らかになってきた。

 欧州委員会のレーン委員(経済・通貨問題担当)は21日、フランスは追加的な歳出削減を行う必要はなく、GDP比3%以下とした赤字削減目標について調整の余地があるとの見方を示した。また同委員は先月、スペインの財政目標を2月に見直す計画であることも表明している。

 EUの正式発表ではないが、市場では緊縮財政一辺倒の政策を事実上見直したものと受け止められている。
 同委員は「欧州危機は既にターニングポイントを越えた」として、政策の焦点を危機対応から、構造改革や競争力向上へとシフトすべきだとの考えを示していた。今回の決定はその考え方に沿ったものとなる。

 確かに欧州問題は危機的な状況を克服したかに思える。スペインやギリシャの破綻はとりあえず回避され、これを反映して欧州各国の株価は堅調に推移している。だがそれは、欧州問題の根深さに対する諦観でもある。欧州問題を根本的に解決するには、財政統合まで実現しなければならず、そのためには途方もない時間がかかるからだ。デフォルトが懸念される国ついては対処療法で対応しつつ、時間をかけて財政統合を行っていく以外に解決する方法はないのである。

 債務過剰国の慢性的な成長率の低さもその判断に拍車をかけている。フランス政府は2013年の名目GDP成長率を0.8%としているが、IMF(国際通貨基金)では半分程度の0.4%しか実現できないと予想している。同様に財政赤字についても、3%以内としているフランス政府に対してIMFでは3.5%程度としており、赤字削減目標の達成は不可能と判断している。

 もっとも市場はまだそのようなムードになっていない。フランスのエロー首相は市場の反応を気にして「3%以内という財政再建目標に変更はない」と表明している。だがEUが事実上、緊縮財政を放棄したことで、市場もそれを追認していく可能性が高いとみられる。

 市場がこれを追認すれば、欧州危機は一段落することになるが、根本的な問題解決は完全に先送りされた形となる。日本も安倍政権の登場で、積極的な財政出動に舵を切り始めており、構造改革を実施する可能性は極めて低くなった。唯一米国だけが、景気回復が鮮明になりつつある状況といってよく、これはまさにリーマンショック以前の状態といってよい。
 リーマンショックを経て世界が大きく変化したかに見えたが、実は何も変わっていなかったという、なんとも皮肉な結果になりつつある。

 - 政治, 経済

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