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ドラッグストア業界の圧力?小林製薬が薬のネット販売を中止

 

 小林製薬は1月から大衆薬のインターネット販売を中止する。ネット販売を中止するのは、目の疲れなどを緩和する「コバラミンEX」、整腸剤「コバガード」など4種類。同社は、2012年9月に通信販売限定の大衆薬の販売を開始したばかりだが、半年も経たずに撤退することになる。同社では撤退の理由について「売り上げの伸び悩み」としているが、ドラッグストア業界の反発に配慮したとの見方がもっぱらだ。

 大衆薬のネット販売については、シェア低下を懸念したドラッグストア業界が厚労省に対して猛烈なロビー活動を行い、販売を制限するよう圧力をかけてきた。この結果、厚労省は省令によって薬のネット販売を禁止する措置を実施し、インターネットで薬が買えないという異常な事態となっていた。
 厚労省がこのような決定を行った背景にはドラッグストア業界の政治的圧力だけが原因ではない。薬の対面販売を義務付け、販売資格を公的資格にして天下り利権を作ろうという厚労省の思惑があった。傲慢な官僚組織が一業界団体の意向だけで動くことなどあり得ないのだ。

 これに反発した楽天などネット企業側は国を相手に提訴しており、昨年12月末、最高裁は薬のネット販売禁止措置を無効とする判断を示していた。法律上は薬のネット販売がようやく認められた形となったわけだが、今回、小林製薬が販売中止を決めたこいうことは、メーカーに対するドラッグストア業界からの圧力がかなり強いことを伺わせる。

 これまで消費者の意向を無視するのは、多くがメーカー側であった。小売店側はこういったメーカー主導の市場に反発し、PB(プライベート・ブランド)などを開発して対抗するというのが、これまでの光景であった。
 だが今回は状況がまったく正反対である。消費者の意向に沿いたいメーカーとそれを妨害しようとする小売店という図式である。
 このことは日本の産業構造における力学関係が大きく変化してきたことを示している。貧しい時代は相対的にモノが少なく、メーカーの方が立場が上になる。メーカーが売りたい製品を売りたい値段で販売しない小売店には、メーカーが製品を出荷しなかったのである。
 ところが高度成長が終わりモノが溢れる時代になると、立場が逆転する。小売店の言うことをメーカーが聞かないと製品を売ってくれなくなるのだ。

 一般に、国の成熟度が高いほど、消費者の立場が強くなるという法則がある。日本の場合には、メーカーから小売店に主導権が移っただけで、消費者の利益は依然として保護されていない。高度経済成長はとっく終了しているのに、精神だけは後進国のままというわけである。

 大衆薬のネット販売が今後、どのような展開となるのかは、日本社会の成熟度を示す格好の試金石となるだろう。

 - 政治, 社会, 経済

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