政府の緊急経済対策がまとまる。内訳は公共事業とファンドを使った事実上の補助金
安倍政権の目玉政策である緊急経済対策の規模と内容が明らかになった。政府が支出する金額は10.3兆円で地方や民間の負担を合わせた総事業規模は20兆円になる見込み。財源は5.2兆円の国債発行と11年度の余剰金を充てる。国の支出分10.3兆円の内訳は、以下の通りとなっている。
・復興防災対策 3.7兆円
・暮らしの安全、地域活性化 1.9兆円
・成長による富の創出 3.0兆円
・交付金 1.4兆円
このうち、復興防災費と暮らしの安全地域活性化費用のほとんど(5.2兆円分)がいわゆる公共事業になる。老朽化した道路やトンネル、港湾の整備、電線地中化などを想定しており、財源はすべて国債を発行して調達する。
成長による富の創出には、日本企業の海外進出を支援する官民ファンド、新事業創出ファンド、不動産官民ファンドとファンドを使ったスキームが多数並んでいる。
要するに10兆円のうち半分は国債に頼った伝統的な公共事業であり、残り半分はファンドを使った成長促進事業ということになる。公共事業とファンドという新旧のスキームをミックスした施策に見えるが実際はそうでもない。
ファンドを使った支援事業はすでに数多く実施されているが、優良な出資対象が見つからず、ただのバラマキ予算に終わっているものがほとんどなのだ。ただし「ファンド」という言葉には斬新なイメージがあるため、一部のマスコミは簡単に騙すことができる。経済産業省を中心に最近の官僚が好んで使う用語である。
今回の緊急経済対策を一言でまとめると、伝統的な公共事業と、ファンドを介した事実上の補助金という2本柱で構成された典型的なバラ撒き予算ということになる。建設国債という用語をあえて使い、赤字ではない雰囲気を演出したいようだが、建設国債と赤字国債には何の違いもない。法律上、公共事業のために発行できる国債というだけであり、何のことはない普通の国債であり、ただの借金である。
公共事業やファンドの効果はさておき 「建設国債」と「ファンド」というキーワードはそろそろ使うのをやめにしてはどうだろうか?
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