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薬のネット解禁判決に対抗して政府は薬事法改正を画策。日本に「法の支配」は存在しない

 

 一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売を禁止した厚生労働省令は違法だとして、通販会社2社がネット販売できる権利の確認を国に求めた訴訟の上告審で、最高裁は11日、国側の上告を棄却する判決を言い渡した。最高裁は昨年12月に事実上、国側敗訴が確定的となる決定を下している(本誌記事「薬のネット販売規制解除へ。最高裁は常識ある判断を下した」参照)。今回の判決は形式的ものだが、正式に判決が確定したことを受けて、ネット通販2社は早速、薬の販売を再開している。

 だが驚くべきことに、政府は今度は判決で違法とされた省令を撤回し、あらたに薬事法を改正して、再度ネット販売の規制に乗り出そうとしている。
 しかも今回の判決は、裁判を起こした2業者のみに対して規制が無効となるだけで、ほかの業者には規制をすることが可能という、メチャクチャな解釈をゴリ押しする方針だ。

 通常、政府が法案を提出するためには、内閣法制局の審査を通す必要があり、この手続きには通常3ヶ月程度かかる。だが政府与党は、この法案を早く通さなければならないよほどの事情があるらしく、政府提出ではなく議員立法で行うという。

 日本は「法の支配」が確立していない国といわれている。法の支配とは、国家権力の支配を排し、権力を正しい法で拘束するという基本原理である。法の支配のもとでは、権力側が強制した不当な法は無効になる。完全な民主国家は法の支配が確立していなければならないとされる。
 これに対して「形式的法治主義」という考え方もある。これは戦前の日本やナチスドイツが採用していたもので、議会で正当に成立した法はすべて正しいという考え方である。ドイツでは、議会がヒトラーに対する全権委任法を成立させ、ヒトラーはそれを根拠に独裁を行った。つまり「悪法も法」というのが形式的法治主義である。

 日本が民主国家であるならば、三権のひとつである最高裁が下した判決は極めて重く受け止められるはずである。最高裁の判決そのものは、省令による規制を不当とするものだが、法の精神という上位概念に照らせば、それが法律であろうが省令であろうが同じことである。省令がダメだったからといって法律ならばよいだろうというのは、安易な解釈である。

 もし政府が十分な議論を経ず、立法化をゴリ押しするようなら、日本はやはり「法の支配」という概念が存在しない、中国や北朝鮮と同レベルの国であることを内外に示すことになってしまうだろう。

 ちなみに安倍首相は日本の政治家の中ではめずらしく「法の支配」という言葉を多用し、これを強く訴えてきた人物である。その理由は自衛隊の存在を合憲とし、最終的には軍を保有したいからであった。
 形式的法治主義では、条文に書いてあればその内容がどんなに間違っていても、絶対に守らなければならないことになる。憲法9条には戦力を保持しないと書いてあるので、形式的法治主義の立場では自衛隊は違憲になってしまう。憲法9条が悪法だと主張するためには、法の支配の立場に立つ必要があるというワケだ。

 もし安倍首相が法の支配の意味を本当に理解し、自衛隊を合憲と考えているのであれば、今回政府与党が検討している改正薬事法は「悪法」ということになる。安倍首相の「法」に対する見識が問われている。

 - 政治, 社会

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