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韓国政府が若者の海外就職と海外起業を推奨。一部では「棄民政策」との声も

 

 韓国の朴槿恵次期大統領は11日、ソウルで開催されているグローバル就業博覧会を訪れ、海外で就職や起業を志す若者に政府として支援することを表明した。大韓貿易投資振興公社(KOTRA)、韓国国際協力団(KOICA)、韓国商工人ネットワークの3組織を連携し、海外人材採用のデーターベースを構築して、就業や起業を支援する。

 韓国の次期政権が若者の海外就職や企業を支援する背景には、統計値には表れない韓国の高い失業率がある。
 韓国の表面上の失業率は3.7%と低い水準にとどまっている。だが日本と同様、韓国の失業率の実態はかなり悪いといわれており、若年層では20%近くに上るという見方もある。
 サムスンなどごく一部の財閥企業の業績は好調だが、韓国の国内産業基盤は薄く、国内企業だけで雇用を確保するのは難しい状況だ。

 また海外で就職する人材は貴重な外貨の稼ぎ手になるという点も大きい。韓国は国内の金融資産が不足しており、企業の設備投資資金の多くを海外からの借り入れに頼っている。何らかの出来事をきっかけに海外の金融機関が資金を引き上げる事態になると、韓国はたちまち外貨不足に陥ってしまうリスクを抱えている。
 日本が韓国に通貨スワップを提供していたのも、韓国の外貨不足のリスクを軽減するためである。海外で就職した人材は、国内の家族に資金を送金するため、安定的な外貨の獲得源になる。

 かつて韓国はドイツに炭鉱労働者と看護婦を大量に派遣し、外貨を稼いできた歴史がある。その政策を実行したのは、朴槿恵次期大統領の父親で軍事独裁政権の指導者であった朴正熙元大統領である。朴槿恵氏は就業博覧会の会場において海外就職を希望する若者を前に講演し、ドイツに派遣された炭鉱労働者と看護婦を例に挙げ、国ために貢献するよう若者に訴えたという。

 だがドイツに派遣された労働者については、韓国に対するドイツからの借款の担保にされていたという説もあり、後ろ暗い歴史という一面も持ち合わせている。朴槿恵氏の父親の政策とはいえ、海外に出て行く若者に対して、軍事独裁政権下に海外派遣された労働者を引き合いに激励したことについて、アナクロニズムと冷笑する関係者もいたという。
 海外に就職機会を求める人はどこの国にも多数存在するが、政府がそれを積極的に後押しするとなると状況は少し変わってくる。海外に出て行った労働者がうまく成果を上げられなかった場合には、下手をすると「棄民政策」にもなりかねないからである。

 日本でも戦後の急激な人口増加に対応するため、ドミニカなどに移民を送り出す事実上の「棄民政策」を行っていた過去がある。貧しい途上国ならいざ知らず、先進国ではあまり採用されない安易な政策であることだけは間違いない。
 日本では今のところ、若者を海外にという目立った動きはないが、近年、若者の海外嫌いを叱責する論調がマスメディアに目立つようになってきている。これが若者を海外に出す政策を求める声に変わるようであれば、日本経済の弱体化がいよいよ深刻になったことの表れと考えてよいだろう。

 - 政治, 社会, 経済

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