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韓国企業や中国企業への人材流出が加速。だがこれを懸念しても何の解決にもならない

 

 韓国企業や中国企業に日本人が転職するケースが増えてきており、一部から技術流出などを懸念する声が上がっている。

 サムスン電子の日本法人である日本サムスンは、同社の代表取締役に元ソニーの技術渉外担当役員だった鶴田雅明氏を迎えた。
 鶴田氏はソニーに入社後、業務執行役員、半導体事業部門のLSI事業部長などを歴任し2011年6月からは技術渉外担当役員を務めていた。

 ほかにも、日本企業から、韓国企業や中国企業の日本法人幹部転職するケースや、韓国や中国の本社に転職する技術者も増加している。

 背景にあるのは、日本メーカーの経営悪化と韓国企業、中国企業の躍進である。20年以上前からサムスンなどアジアの大手企業は、日本の技術者を高給で引き抜き、技術の獲得を進めてきた。ただ、最近は経営不振に陥る日本メーカーが増えており、それにともなって転職する日本人も増加傾向にあるという。

 一部メディアからは、技術流出や韓国・中国企業の日本進出を警戒する声が上がっている。だが落ち着いて考えてみれば、これはちょっとおかしな話である。
 日本には昔から外資系企業がたくさん存在している。しかも日本人の多くは外資系企業のトップは外国人であるよりも日本人であることを強く望んできた。日本マクドナルドの社長は外国人であるよりも日本人の方が安心なのだ。
 海外に進出する日本企業も同様である。日本企業は国際化が下手であるとされ、現地法人の社長はできるだけ現地人であることが望ましいといわれてきた。現地化を進めることができる企業が優秀な企業であるとの認識は一般的となっている。

 これは当然、韓国企業にも中国企業にもあてはまる。日本で成功しようと思う韓国企業は、日本法人トップに日本人を採用するだろう。中国企業も同様だ。

 確かに技術流出の懸念はゼロではないが、ここ数年で状況は大きく変わってきている。かつては日本企業の技術力が圧倒的に高く相手から盗まれる一方だった。だが韓国企業や中国企業の躍進によって、分野によっては立場が逆転し、日本が技術を奪わなければならないものも出てきている。またIT化が進む時代に、転職を制限したくらいで技術の流出を止められるほど国際競争の状況は甘くない。

 さらにいうと、こういった動きは日本と韓国、日本と中国だけのものではない。韓国や中国からも技術者が大量に流出しているのだ。
 韓国は90年代後半の経済危機で多くの財閥が解体されたことから、大量の余剰人員が発生、米国企業に転職する人が相次いだ。最近ではIT系の人材を中心に中国に職を求める人が増加している。一方中国企業からも大量に米国企業に人が流れており、その傾向はますます強くなっている。米国は米国で、インドやフィリピンなどに転職し、家族を連れて移住する人も多い。

 ある国で技術がピークを過ぎると、それに関連した人材は後発国に流れていく。一方、新しい画期的な技術を開発した国は、後発国から優秀な人材を引き寄せる。このゲームは、最終的にもっとも高い付加価値を提供し続けることができた国に、もっとも優秀な人材が集まるというルールになっているのだ。

 もし日本人が日本の技術に自信を持っているなら、このような動きは放置しておけばよい。差し引きすると日本には優秀な人が集まってくるからだ。一方、日本の技術に自信がないという場合にはこれは由々しき問題となる。だが人の移動を制限すれば、逆に優秀な人を日本に招くチャンスはなくなり、技術力の低下はますます激しくなるだろう。
 完全に鎖国でもしない限り、この動きに逆らうことはできないのである。

 - 経済

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