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偵察衛星打ち上げに成功。スタートから10年でようやく常時運用体制が整う

 

 三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は27日、政府の情報収集衛星「レーダー4号機」と実証衛星を載せたH2A型ロケットを種子島宇宙センター(鹿児島県)から打ち上げた。衛星は予定の軌道に投入され、打ち上げは成功した。

 情報収集衛星は、1998年の北朝鮮のミサイル発射を機に政府が導入を決めた事実上の軍事偵察衛星。偵察衛星は低い軌道を飛ぶため静止衛星(気象衛星など)のように常に同じ場所にとどまっているわけではない。このためある特定の場所を連続して監視するためには複数の衛星を常時運用する必要がある。
 政府は 昼間に撮影が可能で解像度が高い光学衛星と夜間や悪天候でも撮影できるが解像度が劣るレーダー衛星を組み合わせて使用する方針を掲げており、光学衛星とレーダー衛星のペアを2組稼動させる予定であった。

 だが2003年にH2A型ロケットの打ち上げに失敗し衛星2機を喪失したことで予定が大幅に狂ってしまった。また2007年にはレーダー衛星1機が故障するというトラブルも発生した。現在稼動しているのは、レーダー衛星1機と光学衛星が3機で、ペア2組の体制が構築できていなかった。
 今回レーダー衛星の打ち上げに成功したことで、当初の計画から10年も遅れてようやく4機体制が実現したことになる。

 政府が運用する偵察衛星の解像度は、光学型が60センチから1メートル、レーダー型が1メールと、一般に運用されている商業衛星と変わりないレベルでしかない。今回レーダー衛星と一緒に打ち上げられた光学実証衛星は40センチ程度の解像度があるといわれており、世界の軍事衛星水準の30センチに少し近づくことになるが、実運用はまだ先になる。
 また衛星による情報収集は、衛星の撮影能力だけでなく、地上施設における画像解析のノウハウも重要になってくる。北朝鮮の核施設やミサイル施設をやみくもに衛星で撮影しても大した情報は得られない。監視の効果を最大限に発揮するには、公開情報、非公開情報を含めた北朝鮮の現地情報との組み合わせが重要であり、ノウハウの蓄積には長い年月が必要となる。

 今回、4機体制による監視網が確立したからといって、すぐに役立つような情報が得られると考えるのは早計だ。衛星による情報収集には長期的な視点が求められる。一方で、衛星による情報収集業務は、かかる費用の割りに効果が少ないという指摘も根強くある。ある程度の期間を経た後には、それなりの成果が明示されなければ、公費を投入し続けることの妥当性が維持できなくなる可能性もある。今回の打ち上げ成功はすべての面におけるスタートラインと考えるべきだろう。

 - 政治, IT・科学

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