米国のボーイスカウトで同性愛者の入団拒否めぐる議論が紛糾
同性愛者をめぐる扱いをめぐって、米国のボーイスカウト団体が揺れている。米国ボーイスカウト連盟は28日、同性愛者の受け入れやリーダーへの登用を禁止する規則を撤廃すると発表した。
ボーイスカウト団体では同性愛者の入団を禁止する措置を長年堅持してきた。だが同性愛者であることを理由に役職を辞任させられた団員が訴訟を起こすケースが相次いだことから、同性愛をめぐる議論が近年激しくなっていた。
ボーイスカウトは子供の活動ばかりでなく、大人が参加するプログラムもたくさんあり、米国では地域のボランティア活動の主軸の一つとなっている。
比較的高齢の団員は、同性愛禁止について評価しているといわれるが、若年層の団員を中心に、時代に合わないとして反対の声が多く上がっていた。映画監督のスピルバーグ氏もボーイスカウト出身で、団体の理事を務めていたが、同性愛者に対する偏見が著しいとして理事を退任している。
今回の決定はあくまで連盟の決定であり、実際の措置は各地区任せるとしていることから、この措置がどの程度普及するのかは定かではない。
ただ同性愛を禁止すべきとう保守層の意見は、全体的にはあまり説得力を持っていないようだ。時代の流れに加えて、ボーイスカウトには指導者らによる多くの性的児童虐待のスキャンダルが発生しているからだ。
オレゴン州最高裁判所の命令によってボーイスカウト連盟が公開したファイルには、1965~85年の期間に1200人以上が関与したとされる子供たちへの性的虐待の詳細がされていた。
同性愛を禁止するといっておきながら、幹部による同性愛的な児童虐待が繰り返されていたのでは、説得力がないのも当然だ。
米国ではしばらくこの論争が続きそうである。
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