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フランスの隣接する2つのタイヤ工場の明暗を分けたものは、長時間労働の受け入れだった

 

 フランス北部アミアンにある2つのタイヤ工場をめぐって、ちょっと変わった事態が発生している。アミアンにはグッドイヤー・ダンロップ・グループの2つの工場が隣接して建っている。南工場はグッドイヤーのブランド、北工場はダンロップ・ブランドの工場だ。

 グッドイヤーグループは経営合理化の一貫で2007年に両工場に対して労働条件の変更を申し入れた。
 だが南北の工場で労働組合が別々に存在してたことから(グッドイヤーとダンロップはもともと別な会社であったことが原因と思われる)、会社側に対する回答が異なるものになった。
 南工場は会社側が提示した、週48時間労働と昇給なしという条件を受け入れた。これに対して北工場はこれを拒否したのである。会社側は南工場に3年で5000万ユーロ(約62億円)の投資を実行し、現在も工場は稼動を続けている。
 一方北工場には追加の投資が行われず、会社側は1200人を削減するプランをあらたに提示しているという。いくつかのリストラ案は司法判断に持ち込まれているが、まだ決着はついていないという。

 週48時間という労働条件は現代の労働者ではかなりきつい条件かもしれない。だが南工場の労働者は雇用があることを最優先し、長時間労働を受け入れている。一方の北工場は労働時間はゆとりのある状況だが、雇用そのものが危機に瀕している。

 隣接するフランスの2工場が抱える問題は、現代の日本にもあてはまる状況といえる。80年代、日本の経済力に危機感を持った米国は、日本に対して働きすぎであるとして労働時間の削減を強く求めた。日本はこれを渋々受け入れたが、最近ではその経緯も忘れ去られ、コンプライアンスブームも手伝って週40時間労働が絶対視される傾向が強い。

 だがコストが高く生産性が低下した国が、一定のGDP成長率を維持するためには、総労働時間を増やす以外に方法はない。日本は先進国の中でも労働生産性が最も低い国である。人口が減少する中、労働時間増加以外に、当面打てる手は少ないのだ。
 日本人の多くは、工場が海外に移転することに批判的であり、金融やサービスといった頭脳労働で稼ぐことに否定的だ。工場の海外流出を防ぎ、国内生産にこだわることは、それはそれでひとつの有効な戦略といえるだろう。だが賃金が世界一高い日本でコスト競争力を維持するためには、労働時間を大幅に延長する以外に方法はない。製造業の国内生産にこだわる以上は、避けて通ることができない課題である。

 - 経済

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