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中国の富豪が大気汚染に抗議?して空気の缶詰を販売。シニカルな戦略が意味するもの

 

 連日、深刻な大気汚染が続いている北京でユニークな商品が販売され話題となっている。チベットなど汚染のない地域の空気を缶詰にした商品が大ヒットしているのだ。

 この商品を発売したのは、中国では有名な大富豪の陳光標氏だ。陳氏は、東日本大震災の直後に東北に入り、救援物資を運搬するなどの社会貢献を行った人物としても知られている。

 「缶空気」の値段は1つ5元(約80円)で、缶には陳氏の似顔絵が印刷されている。販売初日から飛ぶように売れ、数日で完売したという。
 陳氏は、缶空気を販売したのはお金のためではないと説明している。確かに陳氏は、環境と自身の健康のために、自転車通勤を毎日実践していることでも知られている。また常々「子孫のためにきれいな空気を残したい」と語っており、自身が死亡した後は500億円にも上るとされる資産をすべて寄付することも公言している。

 陳氏の行動は、大気汚染に対して抜本的な対策を打たない当局に対するシニカルな批判とも解釈できる(本誌記事「悪化する北京の大気汚染。本当に自動車の排気ガスが原因なのか?」参照)。陳氏は当局に対する批判と解釈されないよう、様々な仕掛けを凝らしている。
 販売されている缶に入った空気はいろいろな地方のバージョンが、その地域の多くは政治的に意味のある場所なのだ。例えば井崗山は毛沢東が革命の根拠地とした場所で、共産党にとってはまさに聖地ともいうべき所である。また雲南省は少数民族政策という意味で、チベットや台湾は中国統一という意味で重要な場所である。極めつけは尖閣諸島で、缶空気の収益はすべて「尖閣諸島問題」のために寄付するというのである。

 これは一種の愛国無罪であり、尖閣死守や革命支持を訴えていれば、その他の部分で当局を批判しても、弾圧されるリスクはかなり少なくなるというわけだ。もちろん陳氏のスタンスがすべての人に受け入れられているわけではない。単純な売名行為と解釈している人もたくさんいる。

 陳氏の真意はともかく、実用的には意味をなさないこの缶を購入した人は、ユーモアにお金を払ったわけであり、それは中国が成熟社会になった証でもある。
 かつてマルクスは共産主義の基本概念の一つである労働価値説に基づき、水には交換価値がないと主張した。その理屈でいけばさらに存在が当たり前の空気に価値など生まれるはずがない。だが空気にこれだけの値段が付いているということは、大気汚染という皮肉な事態がきっかけではあるものの、共産主義国家である中国がもはや共産主義国家ではなくなったことを象徴しているといえる。

 - 社会, 経済

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